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宮部みゆき著 「初ものがたり」

2022年10月24日 16時41分37秒 | 読書記

図書館から借りていた、宮部みゆき著「初ものがたり」(新潮文庫)を読み終えた。本書は、江戸本所深川一帯をあづかる「回向院の旦那」こと、岡っ引きの茂七が、手下の糸吉、権三等と難事件に挑んでいく人情と季節感あふれる捕物帖、ミステリー時代小説で、「お勢殺し」「白魚の目」「鰹千両」「太郎柿次郎柿」「凍る月」「遺恨の桜」の連作形式の短編6篇が収録されている。
先日読んだ「ぼんくら」では、すでに、後継者、政五郎に全てを任せて、名前だけ登場していた茂七が、本書では主人公、いわば、宮部みゆきの「茂七シリーズ」の4番目の小説ということになるようだ。
(1)本所深川ふしぎ草紙、(2)かまいたち、(3)幻色江戸ごよみ、(4)初ものがたり、(5)堪忍箱、(6)あやし~怪~、
「かまいたち」は、随分前に読んでおり、今回、「初ものがたり」、
「なーんだ、読む順番が、違うじゃないか」、
読み終わってから、気が付いた、いい加減爺さんである。いや、はや。

▢主な登場人物
 茂七(本所深川一帯をあづかる岡っ引き・回向院の旦那、55歳)
 茂七の女房(お針子が得意、着物の仕立てで多忙)
 糸吉(茂七の下っ引き、20歳)
 権三(茂七の下っ引き、45歳)
 梶屋の勝蔵(深川の侠客)
 稲荷寿司屋台の親父(正体不明の謎の人物、キーパーソンとして描かれている)
 加納新之助(本所深川方同心)
 猪助(殺されたお勢の父親、酒担ぎ売り)

▢あらすじ
「お勢殺し」
大柄で色黒なお勢という醤油の担ぎ売りが裸の水死体で発見された。下手人は、はたして、交際していた音次郎なのか?、

「白魚の目」
冬木町の寺裏のお稲荷さんで五人の子供が倒れて死んだ。死因は、毒入り稲荷寿司。呉服問屋尾張屋の女中おこまが自身番へやってきて、事件の真相が明らかに。まるで、白魚のごとく、生きたままひょいと飲み込んでも平気な人間がいることに怒り心頭の茂七、「どうなさいます。親分」。尾張屋とその娘おゆうに分からせねばならない。

「鰹千両」
棒手振りの魚屋角次郎に、呉服問屋伊勢屋が突然持ち掛けてきたのは、鰹一尾を千両で買いたいという話。女房おせん、娘おはると貧しい長屋暮らしの角次郎、夢と警戒心で揺れ動き、茂七に相談。伊勢屋の真意は?目的は?、茂七が伊勢屋に乗り込み、直感。伊勢屋の主人、女房の加世、死んだおみつ・・・、
「千両、俺にくれないか、口止め料だ!」、「持ってけ野良犬」、「じゃあ、これをあんたに払う。
口止め料だ」、伊勢屋の口ががくんと開いた。なんともカッコいい結末である。

「太郎柿次郎柿」
雑穀問屋三好屋の10歳の倅長助は、霊感坊主、日道様等と呼ばれ、失せ物探し、憑き物落としで評判になっているが、茂七は、はなっからイカサマ商法と決めつけている。一方で船宿「楊流」で、小間物問屋よろずや手代清次郎、川越の百姓朝太郎、兄弟間の殺人事件が発生、上総屋の娘おりんとの関係は?。一方で大いに気になるのは、富岡橋のたもとの稲荷寿司屋台と親父と梶屋の勝蔵との関係は?、「血は、汚ねえ」

「凍る月」
下酒問屋河内屋の主松太郎(28歳)が、新巻鮭一尾を盗まれたり、台所女中おさとが逐電したりした変事発生で、茂七に探索を依頼してきた。・・・が・・・、その後、河内屋に、霊感坊主、日道が出入りし、おさとは、死んでいる」と言われ、松太郎は、げっそり痩せ・・・。探索する茂七、糸吉、権三の動向は、富岡橋のたもとの稲荷寿司屋台の親父には、察知されており、「おさとさんて人は、生きていますよ」と言われる。「なんだと」。いったいこの親父は何者なんだ?、「怖いような、冴えた月ですね」と親父は言った、おさとの心の形も、今はあんなふうかもしれない、ふと茂七は思った。

「遺恨の桜」
霊感坊主、日道が襲われ、大怪我を負う事件が発生する。一方で、茂七のところへ、味噌問屋伊勢屋の女中お夏が訪ねてきて、言い交わしている仲の清一が行方不明となり、日道からは、深川の地主、角田七右衛門の屋敷のしだれ桜の根本に埋められていると言われていて、茂七は探索を依頼される。日道の父親、三好屋の主半次郎とは何者?、悪どい商法?、恨みを買っているはず。日道の治療をする桂庵先生の膏薬の匂いがヒントになり、清一が、角田七右衛門の屋敷の離れで生きていることが分かったが、実は、清一は、角田七右衛門の・・・、だった。
(巻末の文章)黄桜になった頃、茂七一家は遅い花見に繰り出した。(中略)、権三がそっと茂七にささやいた。「例の屋台の親父ですが」(中略)、「元は侍だったとして・・・やっぱり不思議ですよ」(中略)、「侍は侍でも、町方役人だったんじゃないでしょうか」(中略)、きっとそうだと茂七も思う。(中略)、「黄桜もいいもんねえ」とかみさんが言っている。角田家のしだれ桜も今頃咲いているだろうかと茂七は思った。

 

 


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2 コメント

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旧暦での (アナザン・スター)
2022-10-24 17:32:13
こんばんは。
宮部作品を読む時には、旧暦に充ててでないと季節感がありません。
時代物は、殆どがそうだと思えますが。

全作品を持っていますので、時々取り出しては読みますよ。
何度読み返しても、いい作品ばかりです。
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アナザン・スターさん、こんばんは、 (takezii)
2022-10-24 17:59:25
宮部みゆき作品、全部持っておられる・・、って、凄ーい!。
アナザン・スターさん、読書家なんですね。
今回でまだ、4作品目、読書初心者の爺さん、
全てが、初もので、次々、読みたくなっているところです。
季節感あふれる作風の作者の時代小説好みですので、旧暦も少しづつ分かり始めたような気がしますが、いずれの作品にも、現代小説には無い趣きがありますね。
コメントいただき有難うございます。
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