図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「秋の蟬(あきのせみ)」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」の第18弾(シリーズ最終巻)の作品で、「第一話 ほととぎす」「第二話 秋の蟬」の、連作短編2篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七(とうしち)等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。
「第一話 ほととぎす」
▢目次
(一)~(九)
▢主な登場人物
島田禎次郎・加奈・おいわ、
斉藤兵庫(旗本)・八江、おちよ、神崎十兵衛・神崎敬四郎、
お民、万吉、
お花(丹後屋の娘)伝蔵(口入屋)
▢あらすじ等
楽翁(元老中首座松平定信)の命で越後へ出張、難事件を解決して江戸に戻り、
お登勢と一緒になってから6ケ月経った十四郎は、充実感をひしひしと感じていたが・・。
たまたま渡り掛けた中ノ橋で身投げしようとしていた島田加奈を助け、
橘屋に連れてきて、事情を訊くと・・・・、
元々は、旗本島田家の姫?,姑おいわの嫁いびり?、「嵌められた?」
「私をお寺に入れて下さい。お願いします」
女中のお民が旗本斎藤家の屋敷へ出掛け、女中頭おたかに叱りつけられるが、
謎解きの糸口が・・・・、
読経が止み春月尼が捧げた小刀で加奈は髪を落とした。
万寿院が加奈に数珠を授ける。
「精進するように・・・」
加奈は改めて、残っていた十四郎やお登勢たちに、深々と頭を下げた。
敬四郎が、「ご健勝をお祈りしております」と言ったその時、
「キョッ、キョッ、キョ、キョ、キョ、キョ」
ほととぎすの鳴き声が聞こえてきた。
加奈は、敬四郎を見た。敬四郎が頷いた。
「第二話 秋の蟬」
▢目次
(一)~(九)
▢主な登場人物
紀州屋喜兵衛・おてい(喜兵衛の先妻)・扇太郎(喜兵衛・おていの倅)・おたき(喜兵衛の母親)、
治助(紀州屋番頭)、おみな(紀州屋女中)、
おきよ(喜兵衛の後妻)・吉次郎(喜兵衛・おきよの倅)、
力蔵(岡っ引き)、世之介、
猫目の宇兵衛(与兵衛)、
万吉、
▢あらすじ等
醤油問屋紀州屋の番頭治助が、橘屋にやってきて、10年前に橘屋に駆け込み、離縁した、
紀州屋主喜兵衛の内儀おきよを捜してほしいと懇願され、困惑するお登勢だったが・・。
橘屋総出で、行方不明になっているおきよの足取りをたどり、捜索、
ようやく捜し当てたおきよは悪行に利用され窮地に陥っており、悪党を一気に捕縛するため、
北町奉行所与力松波孫一郎配下の捕り方、十四郎、金吾、千草、藤七、七之助、亀吉、等々、
本書の主な登場人物すべてが「紀州屋」に集結。十四郎の剣も唸り・・・・。
「御用だ!、御用だ!、神妙にしろ!」
慶光寺にやってきた楽翁に呼び出された十四郎とお登勢に、万寿院が言う。
「良い知らせですよ。十四郎殿」、
十四郎は、俯いたまま涙を流していた。・・・・お登勢・・・・・。
感涙の最終巻である。
(完)
▢あとがき・藤原緋沙子
2002年12月に第1巻「雁の宿」を出版してから16年、本編18巻「秋の蟬」で、
この物語は完結といたします。
思えばこの「隅田川御用帳」は、私にとって意義深い作品となりました。
小説家としての処女作が、この「隅田川御用帳」の「雁の宿」でした。
(中略)
「隅田川御用帳」では、かなり辛辣に、歯に衣着せぬ言葉を夫婦双方がぶつけ合って
いますが・・・・・・、決して離縁を促す本ではありません(笑)。
・・・・・・。
私もここで離縁話から卒業します。新たな一歩を他の作品に書き綴ることにしました。
・・・・・・。
著者・藤原緋沙子 プロフィール
1947年、高知県生まれ、本名・藤原千津子、
2001年、立命館大学文学部史学科を卒業、
小松左京が主宰する創翔塾で学び、脚本家を経て、
2002年、「隅田川御用帳シリーズ」の第一巻「雁の宿」で小説家デビュー。
同シリーズで、2013年第二回歴史時代小説作家クラブのシリーズ賞を受賞。
人情時代小説の名手として、リアリティあふれる物語空間の創出、
意外性に満ちたストーリー、魅力的な人物造形などが高く評価されている。
文庫書下ろし時代小説で絶大な人気を得る。
主な作品に、「茶筅の旗」「番神の梅」「龍の袖」等、
また代表的なシリーズに、「藍染袴お匙帖」「隅田川御用帳」
「橋廻り同心・平七郎控」「見届け人秋月伊織事件帖」「浄瑠璃長屋春秋記」
「渡り用人片桐弦一郎控」「人情江戸彩時記」「千成屋お吟」
「切り絵図屋清七」「秘め事おたつ」「へんろ宿」等がある。
ブログ・カテゴリー「読書記」
「隅田川御用帳シリーズ」
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「隅田川御用帳シリーズ」は、全18巻で完結となったが、
すでに、その続編として、「隅田川御用日記シリーズ」が、発刊されており、
引き続き、読んでみたいと思っているところだ。
浪人、用心棒の身分から、白河藩藩士となり、橘屋の主となった十四郎、
お登勢と共に、果たして、どのような物語仕立てになっていくのだろうか。
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