講談社文庫 2007年
昭和四十四年からの六年間のもっともエッセイの
少ない、小説に真っ向から取り組んでいた時期の
珠玉のエッセイ五十一篇。
旅をしたことや新国劇のことなど、歴史上の史実な
ども交えて、幅広く書いている。
僕は史実誌などより、池波氏の個人的な記述の方が
好みなのだが、個人的な見解はあまり多くはないよ
うである。池波氏の師匠は長谷川伸氏と云う人なのだが、
直木賞を獲った時も、そう、と素っ気ない顔をしていたが、
実は相当喜んでいたらしい、と聞いた時の池波氏の六回も
落ちてから直木賞を獲った高揚した気持ちが伝わって来た。
装丁に煙草を咥えた池波氏。きっと大好きだった銀座で
撮られたものだ。今では咥えタバコは禁止だが、おおらかな
時代のエッセイ、なんか心が和んで来る。
(読了日 2025年2・2(日)13:30)
(鶴岡 卓哉)