映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

この空の花 長岡花火物語

2014年08月15日 | 映画(か行)
復興と追悼と祈りの映画



* * * * * * * * * *

大林宣彦監督作品。
先日「野のなななのか」を見た時に、本作が姉妹作であるとあったので、
興味を持ってみました。
2011年作品。
あの東日本大震災があった年です。


舞台は新潟県長岡市。
これまでに大きな災害を幾度もくぐり抜けてきたのです。
古くは戊辰戦争。
そして、1945年8月1日、まもなく終戦を迎えようとするところですが、
大空襲があり街は壊滅。
2004年7月には集中豪雨の被害があり、
同じ年10月には中越地震出大きな被害が。



しかしこの町の人達はその都度必死に立ち上がってきた。
そうして、東日本大震災のおりには、
いち早く被害者を受け入れたといいます。
長岡市では、敗戦後2年目の夏から2004年の中越地震を経てこれまで、
毎年8月1日夜10:30分、あの空襲のあった時間に花火を打ち上げ続けてきたのです。
それは復興と追悼と祈りの花火。
本作は熊本天草の地方新聞記者・玲子(松雪泰子)の取材という形をとって、
この町のこうした歴史を紐解いていきます。



登場人物は自らの戦争体験等を語る語り部として饒舌です。
多くは実際に地元の人たちの経験談をそのまま使用しています。
「なななのか」でも感じたことですが、
作中の言葉はそのまま「祈り」となって宙を漂うような気がする。
よく以心伝心とか、目がモノを言うなどといいますが、
まあそれはあくまでも男女の「愛」について。
本作は、言葉は口に出すことによって初めて力を持つ・・・
ということが実感される作品です。
だからこの作品があって、その先に「なななのか」があるということが
非常によく納得出来ました。
「言霊」について言えば「なななのか」はさらにパワーアップしています。



本作は戦時中の過去と現在、登場人物の幼少期や現在、
洪水の時のこと、震災の時のこと・・・
様々に時空を行き来します。
軸となるのは“花”という不可思議な少女。

一種ファンタジーめいた部分もありますが、
それがまた本作の雰囲気を独特なものとしています。



そして、これまで続けられた花火大会と花火師の方のエピソードにも心打たれます。
夜空に打ち上げられるあでやかな花火も
こうした背景を知れば一層胸に迫ります。
長岡の花火が復興と追悼と祈りの花火であるなら、
この映画もまた復興と追悼と祈りの映画にほかなりません。



「戦争にはまだ間に合う」

「世界中の爆弾を花火に変えて打ち上げたら世界から戦争がなくなるのに」

など忘れがたい言葉も。

じみ~に、キャストが豪華です!!
誰がどの時代の誰になって登場するのか、
などという楽しみ方もできます。


8月15日。
期せずしてタイミングの良い視聴となりました。


この空の花 -長岡花火物語 (DVD通常版)
松雪泰子,高嶋政宏,原田夏希,猪股南
ビデオメーカー


「この空の花 長岡花火物語」
2011年/日本/160分
監督:大林宣彦
出演:松雪泰子、高嶋政宏、原田夏希、猪股南、寺島咲
   筧利夫、笹野高史、片岡鶴太郎、尾美としのり、草刈正雄、柄本明、富司純子

歴史発掘度★★★★☆
メッセージ性★★★★★
満足度★★★★☆