選び取る道
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欲しい未来(こたえ)は、
自分が一番わかってる――。
恋愛、家庭、仕事……。
いつの世も尽きぬ悩みと不安にもがき、
逞しく生きる女性たちを描く、異色の「占い」短編集。
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木内昇さんの短編集「占(うら)」
短編集ではありますが、すべて同時期、日本の大正期を舞台としていて、
ときおり先に登場していた人物がチラリと顔をのぞかせたりもする、
連作形式となっています。
時代を大正期としたのは、文庫巻末対談集にもあるとおり、
日本が近代化するタイミングであり、女性の立場が変わり始め、
また占いの立場も大きく変わった時代を切り取ってみるためなのでしょう。
ここに登場するある女性は、占いに依存し、
自分の気に入る占いが出るまで、占い師の元に通い詰めます。
悪い結果ならよい結果が出るまで、と思う。
逆によい結果であれば、占い師が気に入られたいために適当なことをいっているのだ、と思う。
結果、いつまで経っても納得できずに、自分で新たな道を歩み出すこともできない。
また、人の運命というか、何かに囚われているものが見えてしまう女性がいて、
一時期、名占い師として人気を得るのだけれど、途中からイヤになってやめてしまう。
結局の所、自分の道は自分で納得して選び取って進むほかないのかも知れません。
結婚して家長のために尽くすという道しかなかった女性達が、
他の道を行く可能性がわずかに広がったというこの時代だからこそ、
占いに頼るということもあるわけですね。
占いといえば、やはりスピリチュアルな方向性に近いのですが、
本巻中の「鷺行町の朝生屋」はかなり恐い・・・。
こういうのもアリなのか・・・。
「占」木内昇 新潮文庫
満足度★★★★☆