幕末、自らの商才を開花させた女性
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菜種油を扱う長崎の大店・大浦屋を継いだ希以(けい)26歳。
幕末の黒船騒ぎで世情騒がしい折、じり貧になる前に新たな商売を考える希以に、
古いしきたりを重んじる番頭の弥右衛門はいい顔をしない。
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成功と落胆を繰り返しつつ、希以――大浦慶が経たいくつもの出会いと別れ。
彼女が目指したもの、手に入れたもの、失ったものとはいったい何だったのか。
円熟の名手が描く傑作評伝。
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幕末、異国との茶葉の交易に乗り出し、
最も外貨を稼いだと言われる女商人、大浦慶の物語。
私は全く知りませんでしたが、実在の人物。
これぞ、大河ドラマになりそうな波瀾万丈の物語です。
大浦屋は、長崎の油商だったのですが、
その「長崎」という土地柄もあって、慶は、外国との交易こそが商機と思うわけです。
ペリーの黒船が来て、世間は攘夷思想華やかな頃。
しかし当時のことですから、まずは周囲の人たちが
慶のそんな夢のような話を全く聞こうとしない。
そんなことできるわけない。
女のくせにバカなことを・・・と。
しかしそれでも、慶はアメリカでお茶の需要があると知って、
まずはお茶の栽培から始めるのです。
よほどの覚悟と先を見通す力がないと始められないことです。
ところで、西洋でお茶の需要といえばてっきり紅茶かと思ったのですが、
アメリカに輸出したのはやはり緑茶。
アメリカではそれに砂糖を入れるなどして飲まれていたのだとか。
まあ、紅茶に砂糖を入れたりするワケなので、それもアリなのかとも思いますが。
とにかくそれが大当たりで、彼女の商売は大きく成功を収めるのです。
そんな時期の長崎なので、坂本竜馬や岩崎弥太郎なども登場。
オランダ語や英語も、自力で学び覚えていきます。
一介の商人でしかも女性。
なんだか勇気の出る物語ですね。
実際にはこの時代、他にも多くのまだ知られていない活躍した人物がいそうです。
時代のうねりにワクワクします。
「グッドバイ」朝井まかて 朝日文庫
満足度★★★★★