映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「マンボウ家族航海記」 北杜夫

2011年12月13日 | 本(エッセイ)
やはり問題は株ですが・・・

マンボウ家族航海記 (実業之日本社文庫)
北 杜夫
実業之日本社


           * * * * * * * *

どくとるマンボウこと北杜夫氏の小説やエッセイ、
かつては好きでずいぶん読んでいました。
ご存じのように、氏はこの10月に逝去されましたが、
つい懐かしく、この本を読んでみようと思いました。


実は私が北杜夫氏の本をあるときから読まなくなったのには、理由があります。
それはこの本の中でもずいぶんと詳しく記述がありますが、
株取引にまつわる騒動のこと・・・。
氏が躁鬱病であるとは有名な話ですが、ある躁期のこと。
株の売買を始めたのだけれどそれが尋常ではない。
奥様が泣いて止めるよう頼んでも、怒鳴り散らし株売買を繰り返し、ついに破産。
知人友人、出版社にまで借金があったといいます。
私が最後に読んだ氏のエッセイにはそのようなことがまるで自慢話のように書いてありまして、
正直そのことですっかりこの方に寄せる信頼をなくしてしまいました。
思うにそのエッセイ自体、躁状態の時に書いたものだったのでしょうね。


本作は1986年から2000年までのエッセイをまとめたもので、
この文庫にはご本人の今年8月19日付のあとがきがあります。
その中で
「私が50歳代の頃は4年に1度の大ソウ病が起こり文章もでたらめになったり、
意味不明の文章になったりで編集者のみなさまにたいへんご迷惑をかけたりした時代である。
たいへん申し訳ないことをしたと反省している。」
とあります。
近頃鬱病はいろいろ取りざたされることがあり、たいへんなことは認識していますが、
躁病についても、ただ明るく前向きなどというモノではなく、
やはり病気であり、ご本人にも身の回りの人たちにもつらいことだと、今更わかりました。


何よりもこの本の解説で、娘さんの斉藤由香さんが、
そんなことも今となってはとても懐かしいとおっしゃっているので、
私がとやかく言う筋合いのものではありません。
いずれにしても大いなる変人であったことは間違いないかも・・・。


代表作「楡家の人々」は遠い昔に一度読んだきりなので、
また読んでみようかという気になってきました。


「マンボウ家族航海記」北杜夫 実業之日本社文庫
満足度★★★☆☆


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (たんぽぽ)
2011-12-15 20:29:39
>パールさま
ドクトルマンボウ航海記が、確か私には初めての出会いだったと思います。なんだかつい少し前のように思えるのですが、ずいぶん昔のことなんですね・・・。
同じような時期に星新一さんのショートショートなどにはまっていたと思います。
どっちにしてもかなり軽いですね。
間違っても「チボー家の人々」に挑戦はしませんでしたが・・・。
返信する
寒さがきびしくなりました (パール)
2011-12-15 09:18:37
私もマンボウ先生のエッセイを何作か読みました。「怪盗ジバコ」も楽しい作品でした。
躁鬱病という病気に対するイメージを大きく変えてくれたのは、マンボウ先生だったなあという気がします。

大作を読むのが年齢と共に困難になりつつあります(涙)。遠い昔「楡家の人々」を読み、その勢いで「チボー家の人々」に突入し、第4巻で挫折しました。こちらを何とかしたいと思いつつ長い月日が流れました…
返信する

コメントを投稿