新米添乗員として活躍のはずが・・・
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念願かなって海外旅行の添乗員になった遥。
風光明媚なアイスランド、スロベニア、食べ物がおいしいパリ、北京……
異国の地でツアー参加客の特別な瞬間に寄り添い、
ひとり奮闘しながら旅を続ける。
そんな仕事の醍醐味を知り始めたころ、思わぬ事態が訪れて――。
ままならない人生の転機や旅立ちを誠実な筆致で描く、
ウェルメイドな連作短編集。
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念願かなって海外旅行の添乗員になった遥の物語です。
新米添乗員がさっそく行ったのはアイスランド、スロベニア・・・。
観光としてはマイナーですが、
作中描かれているその地の様子を読んでいるうちに
私も行ってみたくなってしまいました。
しかし、添乗員は仕事として行くのだから、自らが観光を楽しんでいる場合ではない。
遥は自分も初めての場所ながら、事前の下調べをしっかりして、
何度も来ていますみたいな顔をしなければなりません。
地元の案内の方がつくので、観光自体はさほど問題ではなく、
大変なのはお客さんへの対応。
いろいろな人がいますもんね。
クレーマーみたいな人。
やたらと周囲の人に話しかけて嫌がられる人・・・。
そんな時のレストランの座席配置など、添乗員は気苦労ばかり。
でも、パリや北京など観光名所も訪れて、
ようやくこれから添乗員としてキャリアを積み上げていこうというときに、
襲いかかってきたのがコロナ禍です。
遥の所属する旅行会社は、海外旅行専門のところ。
そして遥は契約社員。
あっという間に仕事がなくなり、
実家へ帰れば親には邪魔にされて居心地が悪い。
ほとんどヤケになった遥は、沖縄のコールセンターのバイトをすることになって・・・。
遥が成長していくお仕事小説家と思ったら、
思いがけない終盤が訪れました・・・。
そこの下りは、あまりにも現実を突きつけられるようでちょっとつらい。
一応コロナ禍が開けた今は、
遥にぜひまた添乗員としての物語を再開していただきたい・・・。
「たまごの旅人」近藤史恵 実業之日本社文庫
満足度★★★.5
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