映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ガス燈

2011年12月12日 | 映画(か行)
ほの暗いガス燈の下で、精神に変調を来していくヒロイン

                  * * * * * * * *

邂逅<めぐりあい>のシャルル・ボワイエに魅せられまして、こちらの作品も見てみました。
題名だけは聞いたことはありましたが、私は初めてです。
霧の街ロンドンに灯るガス燈をイメージしていました。
それでなにやらロマンチックなラブストーリーかと思っていましたが、
これはヒッチコック張りの心理サスペンスでした!!


19世紀末ロンドンが舞台です。
ポーラは早くに父母を亡くし、有名な女性歌手である叔母とロンドンの屋敷に住んでいました。
ところがある夜、その叔母が何者かに殺害されてしまいます。
その時まだ子供だった彼女は、以来その恐ろしい記憶が頭から離れません。
さて、美しく成長したポーラは、結婚し、
夫グレゴリーとともにこの屋敷にまた住むことになりました。
ところがまもなく、夫に彼女の物忘れや盗癖のことを指摘されます。
また、夜ごとに部屋のガスの明かりがスッと暗くなり、
誰もいないはずの天井裏から足音やなにやら怪しい物音が聞こえ・・・。
次第に精神の変調を来していくポーラ。


ガス燈というのは、外の街灯だけではなくて、
室内の照明でも使っていたのですね。
初めて知りました。
それが、同じ家の他の部屋でも明かりをつけたりすると、
ガス圧が下がって、暗くなってしまうのです。
だからポーラは自室の明かりがスッと暗くなったときに、
メイドに、「どこかで明かりをつけた?」と何度も訪ねたりしています。
いかにも時代がかっていて、なんだかいいですよね。
しかし、題名にもあるとおり、この現象はある陰謀の証でもあるわけです。


自分では正常だと思っていても、人から精神の異常を指摘され続けたとしたら・・・。
怖いですね。
自分自身も信じられなくなってきます。
この作品は、かなり初めのうちから、夫が怪しいとわかります。
その用意周到かつ執拗にポーラを追い詰めていくやり口。
いったい何のために・・・? 
端正な顔の下に秘められた悪意。
これが薄気味悪さを倍増しています。
また、ひたすら夫のいいなりに、屋敷から一歩も出ず、
閉じ込められたも同然のポーラ。
レディ・ファーストなどといいながらその実、女性は、男性の所有物。
そんな時代の風潮が読み取れるのも興味深いところです。
欲を言えば、お向かいの詮索好きのおばさまにも何か活躍のシーンが欲しかったですね。
このおばさまの存在が、ちょっとした息抜きになっています。


モノクロで映し出される、シャルル・ボワイエとイングリッド・バーグマン。
ひたすらムードがあります。
時には古典も悪くありません。
この作品を見ていたら
「1944年って、ずいぶん古いの見てるね。私はまだ生まれてないよ。」
と、長女がのたまう。

そりゃ、私だって生まれてませんってば!!

ガス燈 [DVD] FRT-068
テリー・ムーア,アンジェラ・ランズベリー,イングリッド・バーグマン,ジョセフ・コットン,シャルル・ボワイエ
ファーストトレーディング


1944年/アメリカ/114分
監督:ジョージ・キューカー
出演:シャルル・ボワイエ、イングリッド・バーグマン、ジョセフ・コットン



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