一大スペクタクル!
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マリアと漣は、大規模な希少動植物密売ルートの捜査中、
得意取引先に不動産王ヒュー・サンドフォードがいることを掴む。
彼にはサンドフォードタワー最上階の邸宅で、
秘蔵の硝子鳥や希少動物を飼っているという噂があった。
捜査打ち切りの命令を無視してタワーを訪れた二人だったが、
あろうことかタワー内の爆破テロに巻き込まれてしまう!
同じ頃、ヒューの所有するガラス製造会社の社員とその関係者四人は、
知らぬ間に拘束され、窓のない迷宮に閉じ込められたことに気づく。
傍らには、どこからか紛れ込んだ硝子鳥もいた。
「答えはお前たちが知っているはずだ」というヒューの伝言に怯える中、
突然壁が透明になり、血溜まりに横たわる社員の姿が…。
鮎川哲也賞受賞作家が贈る、本格ミステリーシリーズ第3弾!
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市川憂人さんのマリアと漣のシリーズ第3弾。
大規模な希少動植物の密売ルートの捜査というところから物語は始まるのですが、
今回メインとなる科学技術は、ガラスの屈折率。
ガラスの屈折率を操ることで、どんなことができるのか、というのがキモです。
しかしそのことが問題になるのは割と最後の方。
なんといっても、超高層ビルの爆破・火災事故に巻き込まれ、
これまで最大の危機一髪を迎える“無駄に美人”のマリアのところが、見所であります。
このストーリーの舞台は1983年年末から1984年年始にかけてのU国N州M地区。
・・・つまりニューヨークはマンハッタンを想像させるわけですが、
ここで起こる超高層ビルの爆破事件とその少し後に起きる大崩壊という、
私たちにはおなじみの大スペクタクルが繰り広げられるのです。
時も事情も全く別ではありますが、
そのビルにマリアがいるというわけで、これはもう、目が離せない。
本作はシリーズ前作の設定や出来事がそのまま踏襲されており、
飛行船「ジェリーフィッシュ」が飛び交う世界。
ここでも大きな役割を占めています。
青いバラが登場するのもご愛敬。
さて、そのビルの最上階で関係者全員の死体が発見される。
まさに、「そして誰もいなくなった」状態。
そこは完全な密室状態で、自殺とみられる痕跡は皆無。
犯人は一体どこへ消えたのか?
というのがメインの謎であります。
ストーリーとしては、確かにたっぷり楽しめました。
けれど、大富豪の「悪趣味」や、革新的科学技術、殺人計画、偶発性・・・
どれをとってもあまりにもあり得なさそうなのが引っかかります。
これはもう、SFをも超えてファンタジーの域でしょうか。
図書館蔵書にて(単行本)
「グラスバードは還らない」市川憂人 東京創元社
満足度★★★☆☆
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