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「魔法飛行」加納朋子

2009年06月15日 | 本(ミステリ)
魔法飛行 (創元推理文庫)
加納 朋子
東京創元社

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加納朋子さんの、駒子シリーズ第2弾。
「ななつのこ」の続きで、
駒子が書いた文を瀬尾さんが読んで、
その感想を手紙で返す、という形式。
このシリーズは「手紙形式」というのも一つのミソなのです。
ここには4つのストーリーが並んでいるのですが、
そこに、誰が書いたのか不明な、なにやら怪しい手紙が挿入されています。
それについては、伏線となっていて、4話目に種明かしがあるという、
この辺の凝った趣向も、加納さんらしいですね。


表題になっている「魔法飛行」は、駒子の学園祭でのストーリーです。
駒子は友人の野枝と二人で受付をすることになったのですね。
テントで案内をしたり、パンフレットを配ったり。
子どもには風船を渡したりもする。
元気な5人組の小学生も来ました。
双子も混じっています。
野枝の幼馴染という卓見もやってきました。
彼はUFOオタク。
野枝はいたって現実主義で、UFOなどハナから馬鹿にして信じない。
卓見はどうやら野枝のことが好きのようなのですが、
UFOについてはバカにされるだけで、ちょっと寂しい。
そこで、卓見は、先ほどの双子の協力を得て、
テレパシーの実験をするというのです。
構内にある塔の上と下の地面に双子を配置し、
下の子に告げた言葉が塔の上の子に伝われば成功。
・・・・さて、その守備は?

不思議不思議、見事テレパシーは成功するのですが。
さて、これはオカルトの話でしたっけ?
いえいえ、この辺も、後ほど瀬尾さんがきちんと秘密を教えてくれます。
でも、時にはこんな風に、
不思議なことに対して夢を持つのもいいものです。
魔法飛行。
子どもの頃の無邪気な憧れが思い起こされます。


ラストのストーリー、「ハロー・エンデバー」では、
手紙の中の瀬尾さんではなく、
行動する生きた瀬尾さんがようやく登場。
しかし、このとき駒子は、自殺するかも知れない人を探し出すのに必死。
そこに瀬尾さんの手助けが加わって、なかなかスリリングな展開となります。
子どもじゃない。
でも大人でもない。
そんな狭間にある駒子の日々。
語り口はソフトながら、
そこにはなかなか厳しい現実も横たわっているのです。

瀬尾さんのニュージーランド土産、大きな羊のぬいぐるみを抱えつつ、
クリスマス・イブの夜は更け行く。

満足度★★★★☆



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2 コメント

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Unknown (藍色)
2010-04-12 18:45:40
何だかとても懐かしかったです。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
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表紙 (たんぽぽ)
2010-04-12 21:24:59
>藍色さま
改めてみると、このシリーズの表紙、いいですね。
時々、中身より表紙につられて本を買ってしまうことがあります。
このイラストはなかなか中身にマッチしてますね。
ほんわかしているようでもなかなか厳しい現実が描かれてもいる。
これからも加納朋子さんの著作は楽しみです。
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