リチャード三世は本当に悪逆非道だったのか?
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薔薇戦争の昔、王位を奪うためにいたいけな王子を殺害したとして
悪名高いリチャード三世。
彼は本当に悪逆非道を尽くした悪人だったのか?
退屈な入院生活を送るグラント警部は、
ふとしたことから手にした肖像画を見て疑問を抱いた。
警部はつれづれなるままに歴史書をひもとき、
純粋に文献のみからリチャード三世の素顔を推理する。
安楽椅子探偵ならぬベッド探偵登場!
探偵小説史上に燦然と輝く歴史ミステリの名作。
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先に英国のリチャード三世に関連する映画「ロスト・キング」を見たのですが、
それに関連して、同じくリチャード三世を扱っている本作を読んでみました。
本作は1951年に発表されたものですが、
いまだに愛され、読み継がれている作品です。
「ロスト・キング」の中でも言われていますが、
リチャード三世というのは1400年代、まだ子どもの甥2人を殺害して王位に就いた、
悪逆非道な王、というのがイギリス人の多くの人の常識とされています。
骨折で入院中のグラント警部が、ふとしたきっかけからリチャード三世の肖像画を目にして、
この人物が本当に悪逆非道・残忍な人物であったのか?
と疑問を覚え、リチャード三世を調べ始めるのです。
入院中でしかも600年も前のこと、
協力者を得て様々な文献をあたるというのが最大できること。
・・・ということで、著者は「小説」という枠組みの中で、
実際の文献をあたり、歴史に刻まれた悪評高いリチャード三世の実像に迫っていくのです。
例えば日本だったら、「明智光秀はなぜ織田信長を裏切って本能寺の変が起きたのか」
という永遠の命題を解き明かす、
みたいな話を小説仕立てにする・・・という感じですね。
リチャード三世が亡くなってから人からの伝言などを記録したものは、参考にしない。
あくまでもリチャード三世存命の折、リアルタイムで記録したと思われる文献のみを参考にする。
そのようなコンセプトで調べてみれば、
そもそも幼い王子たちが行方不明になったり殺害されたという記録がない。
リチャード三世の醜聞はどうも後の王、ヘンリー7世側のねつ造らしい・・・というのです。
歴史好きにはたまらなく魅力的。
映画「ロスト・キング」の主人公の女性などは、
リチャード三世に肩入れするあまり、彼の墓所を探し始め、
ついに突き止めるという偉業を成し遂げました。
もしかすると本作も、そんな彼女の動機づけの一つだったのかも知れません。
ところで本作、私は初め図書館から文庫を借りたのです。
ところが、古い文庫本のなんと活字の小さいこと!!
む、ムリ・・・。
無理矢理読めないこともないけれど、ストレスばかりが大きくなりそう。
ということで、結局文庫を購入して読みました・・・。
グスン。
古典的作品でも新しい版であればちゃんと活字は大きくなっているので、
ありがたいことでございます。
「時の娘」ジョセフィン・テイ 小泉喜美子訳 早川書房
満足度★★★★☆
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