ヴィクの始めの物語
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料金は一日125ドルと必要経費。
報告書は作成しますが、調査方法の指図はお受けしません
――夜遅くに事務所を訪れた男は、息子の恋人の行方を捜してくれと依頼する。
簡単な仕事に思えたが、訪ねたアパートで出くわしたのはその息子の射殺死体だった。
依頼人が被害者の父親ではないことも判明し、さらには暗黒街のボスが脅迫を……
圧力にも暴力にも屈しない私立探偵V・I・ウォーショースキーの熱い戦いが始まった!
多くの女性たちに勇気を与え、励ましてきた人気シリーズの第一作。
翻訳をリニューアルし、新たに解説を付した新装版で登場!
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私立探偵V・I・ウォーショースキーの、シリーズ第一作です。
私は当然読んでいるはずなのですが、ほとんど内容を覚えていなかったこともあって、
初心に返ってヴィクの始まりの物語をまた読んでみたくなりました。
本作がアメリカで出版されたのは1982年。
サラ・パレツキーのデビュー作だそうで、
こんな時からヴィクの人物造形がすっかり完成されていたというのも、すごいです。
日本での出版は1985年。
そして2010年に同訳者にて翻訳がし直されて、現在「新版」として売られています。
夜遅く探偵事務所に現れた男から、ヴィクは息子の恋人の行方を探して欲しいという依頼を受けます。
翌日、ヴィクが訪ねたアパートで出くわしたのは、その息子の射殺死体だった・・・!!
ショッキングな幕開けから始まり、ヴィクの地道な調査から現れてくる巨悪。
ヤクザからボコボコにされながらも奮闘するヴィク。
中にはちゃんとラブロマンスも。
第一作目にして、もうすっかりシリーズの骨格ができあがっています。
ヴィクが頼りにする女医・ロティ。
亡き父の同僚だったボビー・マロリー巡査部長。
新聞記者のマリ・ライアスン。
おなじみの登場人物たちも、もうここから登場しています。
でも、ミスタ・コントレイラスや、愛しいワンコたちがまだ出てこないのが淋しい・・・。
そしてこのときヴィクはすでにバツイチなんですね。
別れた夫の人となりについては、後の作品で伺うことができます。
さてそれにしても40年前の作品ということになります。
ヴィクのタフさは変わらないけれど、さすがに本作を読むと時の流れを感じます。
まずは女性の探偵というのが珍しかった。
本作中でも、珍しがられたり、女性と知ってがっかりされたり、
そんな描写があちこちにあります。
さすがに今ではそこを突く人はいないですね。
コンピュータはまだ出始めたばかり。
IBMからのダイレクトメールを見てもヴィクは興味を示しません。
パソコンなど探偵の仕事になんの役にも立たないと、このときは思っているのです。
ケータイももちろんスマホもない時代。
報告書はタイプライター。
そして驚いたのは、ヴィクが大学に行って学生の名簿を求めると、
スンナリとそれが差し出されたこと。
・・・はあ、確かにありましたよね、そういう時代。
今はそんなことはあり得ないけれど、
でも逆にフェイスブックでもっと簡単に分かったりするかも知れない。
おかしな世の中です。
ともあれ、ヴィクの始まりの物語を楽しむと同時に
時代の変遷をもたどることができるという、ステキな一冊です。
「サマータイム・ブルース (新版)」サラ・パレツキー 山本やよい訳 ハヤカワ文庫
満足度★★★★☆
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