カルト教団の中にいた子どもたちの未来
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かつて、カルトだと批判を浴びた<ミライの学校>の敷地跡から、
少女の白骨遺体が見つかった。
ニュースを知った弁護士の法子は、胸騒ぎを覚える。
埋められていたのは、ミカちゃんではないかーー。
小学生時代に参加した<ミライの学校>の夏合宿で出会ったふたり。
法子が最後に参加した夏、ミカは合宿に姿を見せなかった。
30年前の記憶の扉が開くとき、幼い日の友情と罪があふれ出す。
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弁護士の法子は、かつて、カルトだと批判を浴びた<ミライの学校>の敷地跡から、
少女の白骨遺体が見つかったというニュースを知り、30年前のことを思い出します。
法子は小学生時代に、その<ミライの学校>の合宿のようなものに、
3年間一週間ずつ参加したことがあったのです。
当時は、それが特別な宗教団体だという認識はなく、
何か林間学校のようなものと思い、級友に誘われるままに参加したのでした。
そしてそこでは特別な宗教的な教えはなかったのですが、
子供の自主性を育てるというような、ある種の理念に基づいて教師たちは行動していて、
法子はいつもの学校とは違うやり方に、戸惑いもしたけれど、好感も抱いたのでした。
法子は彼女の学校の中では、あまり周囲の子となじめず、
けれど一人きりにはなりたくなかったので、回りの様子をうかがい、調子を合わせて、
でもそのことに苦しさを感じていました。
このミライの学校でなら違うのではないかと期待していたのですが、
結局はどこも同じ・・・。
理想を掲げて作られた場所であれ、いつもの日常の場所であれ、
子どもたちが作り出す世界は、そう変わらない。
けれどそんな中でも法子には信頼できる人物がいて、
それは、法子たちのように夏休みの短期間ここにやってくる子どもたちではなく、
親元を離れて、ずっとここで暮らしている中学生のシゲルと、同い年のミカ。
でも、法子が中学に入ってからはここには来なくなり、
少しの間手紙のやりとりはしていましたが、
その後音信も途絶え、すっかり忘れていたのです。
そんなところへ、ミライの学校敷地後から見つかったという少女の白骨遺体。
まさか、それはミカなのでは・・・?
法子に胸騒ぎが沸き起こります・・・。
ある種の宗教団体にハマる大人たちの物語はよくあるのですが、
その子どもたちに焦点を当てたものは少ないかも知れません。
自分で選んだ訳ではないのに、その世界で生きざるを得なかった子どもたちには、
どのような未来が待っているのか。
その教義によって、子どもたちと共に暮らすのではなく教団に預けっぱなしにする親の気持ち、
引き離された子どもたちの気持ち。
そうしたものをくみ取って物語は進んでいきます。
やがて、法子はこの遺体の人物を殺したと主張する女性の弁護を引き受けることになるのです。
物語は、ほとんどが法子の視点で語られていて、
終盤、依頼された弁護を引き受けるべきかどうか逡巡するのですが、
最後にあるきっかけで、引き受けることを決意。
そしてそのすぐ後に最終章としてようやく、ミカの視点での描写になります。
ここで登場する法子は、少し前まで迷いに迷っていた彼女とは別人(!)のようで、
毅然として頼りになる。
そうした切り替えが読んでいてワクワクしました。
読み応えたっぷりの物語です。
「琥珀の夏」辻村深月 文春文庫
満足度★★★★☆
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