映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「少しだけ、おともだち」朝倉かすみ

2019年12月24日 | 本(その他)

少しヘンでイタい人たち

 

 

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ご近所さん、同級生、バイト仲間や同僚―。
夢とか恋バナとか将来を語ることもあるけど、
ほんとうに大切なことはそんなに話してないかもしれない。
女同士ってちょっとむずかしい。
でもたった一人は寂しいからやっぱり「おともだち」は必要だ。
仲良しとは違う微妙な距離感を描いた短編集。
書き下ろし「最後の店子」「百人力」を加えた10作品を収録。

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朝倉かすみさんは、北海道出身の作家さんであるにもかかわらず、
私あまり読んでいなかったのです。
というのも、かなり以前だったと思うのですが、
たった一作読んだものがあまり好きになれなかったというだけ。
たまたまそういうものだったのかもしれないし、食わず嫌いはやめましょう、
ということで、信頼感のあるちくま文庫の一作を手に取ってみました。


「少しだけおともだち」。
短編集ですが、本巻の中に、こういう題名の一作があるわけではありません。
主に女同士の友人関係をテーマとして描かれているのです。


冒頭の「たからばこ」は、小学生のうてなが主人公。
彼女が友人の家へ遊びに行き、夕暮れ時に一人で家へ帰る道すがらの描写に、
ドキドキさせられました。
母親から暗くなる前に帰るようにと言われていたのに、刻一刻とあたりは暮れていく。
さほどの距離ではないけれど、黒々とした木立のある公園を通り抜けていかなければならない。
こういうときの子どもながらの心細さが、
まるで自分も子どもになったみたいに、恐ろしく感じられたのです。
・・・しかしそう感じるのも無理はない、実際事件は起きてしまうわけで・・・。
なんとも突き放すかのように苦い結末。
あれ、こういうストーリーを書く方だったっけ?と、やや意外だったのですが、
しかしこの一作で覚悟が決まりました。
この本は、甘ったるい明るい物語の本ではないのだ、という心構えが。

 

ここに出てくる女性たちは、誰もが少しイタい感じがします。
悪い人ではないのだけれど・・・。
けれど読み進むうちに結局私たちと同じなのかな、と思えてくる。
誰もが少しヘンでイタい。
けれど一人でいるのはさみしいから、なんとなく寄り添ってみたりする。
でもやっぱり少しヘン。
すっかり同調して大親友に、なんてことにはならない。
でも実は相手から見ても「少しヘンでイタい」と思われているのだろうなあ。
でもまあいいか。
そういうところが愛すべきとところでもあるのだから・・・。
というような「少しだけ、おともだち」なのだと思います。

なかなか興味深い。
もう少し他のものも読んでみようと思います。

「少しだけ、おともだち」朝倉かすみ ちくま文庫
満足度★★★☆☆

 



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