映画と本の『たんぽぽ館』

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「私はそうは思わない」佐野洋子

2011年07月19日 | 本(エッセイ)
人に媚びずパワフル

私はそうは思わない (ちくま文庫)
佐野 洋子
筑摩書房



            * * * * * * * *

昨2010年11月に72歳で亡くなった、著者の追悼特集ということで、
文庫が店頭に並んでいました。

佐野洋子さん。
考えてみたら私は「100万回生きたねこ」と
「おじさんのかさ」くらいしか読んだことがないような・・・。
でもどちらも大好きです。

この本は1987年に出されたエッセイ集。
この題名がいいですね。
「私はそうは思わない」。
むやみに人に迎合せず、独自の考えを貫こうとする。
私自身の弱いところではあるので、
そういう強さを持つ方にはあこがれてしまうのです。
著者は子供の頃から「私はそうは思わない」という子だったので、
母親にとっては嫌な子供だったに違いないといっています。
「私はそうは思わない」というのは「私はこう思う」というのと少し違うというのですね。
その少しの違いが、やはり大きな違いであった、と。
つまりはちょっとへそ曲がりで、強情、頑固・・・。
でもそういうところが、
100万回生きたねこの、そして雨が降っても大事な傘をささないおじさんの、
独特な魅力につながっているのに違いありません。


また、著者は息子さんのことも「僕はそうは思わない」人らしいといっています。
小学校一年生くらいの息子さんに「みにくいあひるの子」を読んでやると、
「なんで白鳥の方がいいんだよ。アヒルに悪いじゃんか」といったとか。
「あひるはあひるとして立派に生きていけばいい」
そういう独自の視点はとても大切だと思うのですね。
ちょっと虚を付かれた感じがして、
そしてもっともだと感心してしまうのです。


さてそんなわけでこの本は、通常のお行儀のよいエッセイとはひと味違う、
人に媚びずパワフル。
その独自の生き様をしのぶにはもってこいの本となっています。

「私はそうは思わない」佐野洋子 ちくま文庫
満足度★★★★☆


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