【備忘録】
何だか奇妙である。
野田総理大臣が6日午後、事務次官会議で訓示。 「政治家だけで日本の再生を果たすことはできない。それぞれの府省の皆さんの全力を挙げてのサポートが必要だ。 |
違和感がある。こんなことを、いちいち言わなくてはいけないこと自体がおかしい。
公務員(官僚組織)とのつきあい方を変えたとか、首相が掲げる「政と官の緊密な意思疎通による真の政治主導の確立」等と新聞では報じられた。民主党政権は政治主導を掲げ事務次官会議を廃止したが、野田政権では官僚との融和が進みそうだともあった。(毎日jp.)
『「事務次官等会議」は、「政治主導に反する」んじゃなかったの?
そんな減らず口はたたかない。今度の「各府省連絡会議」は、「事務次官等会議」とは異なり、官房長官、副長官、事務次官が出席者になるようだ。
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一事が万事である。ボタンの掛け違い、才走る傾向の民主党のひょっとしたら最大のミスが、公務員組織への対応だろう。
攻撃する相手としか見なかった集団を、きちんとグリップする能力もとぼしく、そうする努力の必要性も理解できなかった。少なくとも、これまでは。言葉は厳しいが、威張り散らせばいいという感覚のリーダーの存在が、どれほどのマイナス影響を及ぼしたか。政権交代の意義も、デイリーワークが前に進まなければ帳消しになる。進まないことを、公務員組織のせいにして、自分たちは責任をとらない。これはよくない。
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父は国の役人をしていた。引退し、亡くなってずいぶんになる。もちろんいわゆるキャリアでも技官でもない。普通の事務系公務員である。自分のことを役人と言っていた。
自分がまだ子供のころ、内閣改造があるたびに、今度の大臣はこんな人だなんて、いろいろ話しをしてくれた記憶がある。一番評価が高かったのは故中川一郎代議士が農林水産大臣になった時だった。後に尋ねたら、農政の専門家としての、信頼があったからだとのことだった。代議士は農政専門の学校出身者である。
8月の終わり、各省の概算請求を大蔵省に提出する。その前後は忙しかった。夏休みに何処かに連れて行ってもらった記憶がない。
12月開会だった通常国会(予算審議)では、年末から1月中が一番忙しく、父親が帰宅する姿を、特にクリスマス時期は見た記憶がない。泊まりこみもあったと思う。
12月の御用納め(仕事納め)。形だけだが、大臣からの陣中見舞いが、それぞれの役所で一番忙しい部局にある。
『〇〇大臣からの陣中見舞いです。
そんな様子をTVで見たことがある。
食堂からの炊き出し(おにぎり)があったりするのも、この時期。ホントかウソかはわからないが、農林省の食堂のご飯が官庁の食堂では一番美味いんだ。そんなことを教えてくれた。
もちろん、どんな組織でも社会でも同じだろうが、そこにはどろどろしたものもある。出世競争も当然ある。役所でも同じだと思う。
様々な意味で有能な大臣の時は、役所のパワーは予測値を超えるとも言っていた。
もちろんボクは実際見たわけではない。父の昔話は美化されたものの可能性も否定はしない。でも、父が国のために働いている。役所の人をすごい、偉いと思ったのは事実だ。様々な評価があり、誉められることのない公務員組織ではあるが、ひとりひとりの能力を、きちんとした旗印を見せて、引き出す政治力・人間力が、リーダー(大臣)に求められる。それこそが政治主導のはずだ。でも、この2年間そうではなかった。それができない政治家には、普通に働く公務員として、何か違和感を感じる。変だと思う。
野田総理が、上のようなことをわざわざ訓示しなくてはならないこと自体、やっぱり奇妙なことなのだ。そして、その原因は100%とは言わないけれど、かなり訓示している側にあると思う。