2日土曜日朝、ニュースを寝ぼけ眼で見ていた。こんな内容だった。
文部科学省
高校を2年間で卒業して大学に入学できる制度を創設する方針を決定。
近く開かれる国家戦略会議で平野博文文科相が打ち出す。
目標
優秀な高校生を早く大学に進学させて専門分野を学べるようにする。
国際社会で活躍できる人材の育成を狙う。
関連記事をDLして、翌日以降読むことにした。考えがまとまらないけど、書いてみようと思う。
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『大学に入学できる制度』とあるが、あくまでも大学入学が前提なんだろうか。そんなことを考えた。でも、まず気になったのが、学習指導要領との関係である。
高等学校学習指導要領は、第1章総則、第2款の1、『卒業までに履修させる単位数等』で、『~総合的な学習の時間の単位数を含めて、74単位以上とする。』と定めている。74を3で割ると、25以下である。
高等学校の単位は、『1単位時間を50分とし、35単位時間の授業を1単位として計上することを標準とする。』である。25という単位数は、50分×6時間授業ならば、4日とちょっとである。6時間授業3日、7時間授業1日で25になる。これを35週繰り返せば、25単位になる。3年間繰り返せば、75である。単位数だけを見るならば卒業である。しかし現在多くの学校が、6時間授業5日間(以上)である。これは、74単位はあくまでも最小値だからだ。
2年で卒業の場合、この74単位をどうするかである。特例を設けることは可能だろう。しかしながら、どのような理由付けで74以下でも可とするかである。一番簡単で、誰でも思いつくのは、『優秀ならば』3年次科目を全部履修免除にして、74以下でも卒業認定するという、やや荒っぽい方法である。
優秀の定義。難しそうだ。
平成23年度、埼玉県内には総合学習・LHR(通例各学年1ずつ)を除き、週33時間授業の学校が6、34が3、35が1の高校があった。2倍すると、2年間で66~70単位になる。最小値に近い。理屈付けもできないわけではない。夏休み、冬休みも授業を入れれば、単位数は増やすことも可能である。しかしながら、卒業まで3年間かけ、90単位から96単位履修してきた生徒たちの学びの分量とくらべれば、どうしても少なくなる。少なくても、1年早く卒業を認めることもありだと思う。しかし、学習の質・分量をどうとらえるか、どう評価するか。きちんと考えなければならない。僕は学習の質・分量を減らすことは、やや、疑問を感じる。(6/3)
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高校生活が2年で終わる。毎日jp.の記事にも出ていたが、『6年制の「中高一貫」校を5年で卒業する生徒や、スポーツ、芸術などに秀でた生徒が中心になると想定される。』のかもしれない。でも、中高一貫校(中等教育学校)とはいえ、学校教育法に以下のように規定されている。
第66条
中等教育学校の課程は、これを前期3年の前期課程及び後期3年の後期課程に区分する。
(下線は僕が付した。)
前期課程3年間は義務教育期間である。後期課程も3年間なのだ。これを3年+2年(以上)に修正しなければ、ダメである。
仮に中高一貫校を合計5年で卒業する方を学業優秀者、スポーツ、芸術の方を一芸有能者として、大学に進み勉強させるために、2年で卒業を認める。それはよしとしよう。しかし次のステージにおいて、困らないようにするには、勉強する内容・分量を3分の2してもいいとは限らない。大学入学生としての知識量は、18歳で大学生になる人と一緒に勉強させても大丈夫にしなければならないと思う。
勉強するのは、5教科だけでいいとは限らない。短絡的思考の人が考えるように、学業優秀者の場合、芸術、家庭科削除とは、絶対ならないと思う。また、スポーツ、芸術のうち、スポーツについては年齢の問題、芸術も芸術だけに偏りを認めればいいかというと、それも違うと思う。少なくとも、意見が分かれることは目に見えている。いずれにしても、2年卒業コースの教育課程、それを可能にする授業時間設定をするべきだろう。これは、現行の学習指導要領で、各教科・科目の最小必習得単位を元に、2年で卒業を希望する生徒のために、何を何時間学習させるか、相当綿密に別コースを設計するべきである。
学業優秀者のコースの場合、根強いエリート教育への拒否反応。受験競争に対する世の中の受け止め方など、超えなければならない問題、整理すべき事項は多い。特に公立高校の場合、平等性という言葉が、ついて回る。大学9月入学の動きとも併せて考えざるをえない。(6/4)
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giftedという言葉がある。まさに2年で卒業する生徒は、そうあってほしい。exceptionalは、例外的な扱いでいい。ただ、新聞、ネットで記事、ブログを読んだが、次のステップへの学習の質・分量のことや、スポーツ、芸術分野の次のステップに進む者として、持つべき基礎基本とは何なのか、高校教育は何をどこまで引き受けるべきなのかという観点の記事や意見はあまりお目にかかれなかった。
また、高校を2年で卒業する生徒の進学先が、当然のように日本国内の有名大学であるとする、意見が目に着いた。ただ、これは違う。卒業後半年間留学準備にあて、秋から、外国の大学に進学する場合ことも可能なはず。さらにいえば、2年半で卒業もありなのか。制度設計はこのケースも考えるべきであると思う。(6/5)
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考えがまとまらない。
6月5日、文部科学省が公式に制度創設の考えを公表した。夜のニュースを見る限り、どうも、2年終了時、大学に進学した場合、高校卒業とすることになるようだ。高校卒業程度認定ではなく、高校卒業である。
今後の動きを注視したい。