誰でも知っている(と、思っている)ことを、あえて映画にする。「竹取物語」をジブリが映画にする。チャレンジングである。
先月末、見てまいりました。
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かぐや姫は何かの理由で、月世界から地上に降りてきた。その理由とは...
ストーリー骨格は誰でも知っている。少なくとも、みんなそう思っている。そこに、高畑監督はあえて解釈を加えた。どうなることか、興味を持った。
竹取の翁と媼(たけとりのおきな・おうな)夫婦は、ある日突然娘を授かる。二人は貧しいながらも、娘を一生懸命に育てる。娘の幸せを願い、できることを精一杯する。娘も養父母の期待、思いにこたえるように、すくすくと成長する。お互いを思う気持ちはとても強い。しかし、翁が考える娘の幸せと、娘の考える幸せは異なる。時がたつにつれ、お互いの気持ちは、徐々にずれはじめていく。世代間の考え方、感じ方の違い。いつの世も起こりうること。切ないものである。
見る前はやや長い(137min)と考えていたが、映画が始まると、どんどん引き込まれた。ものがたり全体として、大きな山はあまりないように思う。ていねいに、ゆっくりと、かぐや姫と、姫を慈しむ翁・媼夫婦の心情を描いている。激しさよりも、重さ、切なさが印象的。感情は爆発するのではなく、あふれ出す感じである。
絵の美しさは事前に報道されていたとおり。映画を見終えて感じたことは、「こういうきれいさ、美しさもあるのだ」ということ。
「かぐや姫」は昨年の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」、今年の「シュガー・ラッシュ」や「モンスターズ・ユニバーシティー」の絵の美しさ、きれいさの対極にあるものだろう。「ヱヴァ」や今年のディズニー2作品の絵の美しさは、新品のプラスティック、アクリル製品のようなきれいさ。人造物の究極にある感じ。傷一つない印象である。本作は墨絵、水彩画のような美しさ。こんな描き方もあるのかと感心した。
かぐや姫の幼少期の描き方は、文句なくかわいい。さすがジブリである。成長後の姿は、声を担当した朝倉あきさんと、女優の宮﨑あおいさんや仲間由紀恵さんを混ぜた感じ。静かな、憂いのある、重いさだめを生きるヒロインとしてよく描かれている。
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☆4コはあげていい。今年mustの1本、現在公開中である。