高校生の時、私が所属していたクラブは「お帰り部」。
つまり、な~んにもクラブ活動はしていなかった高校生だった。
授業が終われば家に帰る。
学校には長居はしたくない。
家に帰るとテレビをつけて再々放送の「われら青春」なんかを見て喜んでいた。
そもそも、運動するのも、サークルするのも、なんとなく面倒くさくて、「クラブなんて」と1年生の時に思ってしまったのが良くなかった。
結果、クラブ活動は何もせずに3年間を送ってしまったのが、今となっては少々後悔している青春なのであった。
とはいえ、一応、2年半はクラスの代議員(クラス委員長みたいなもの)をやっていたし、文化祭では先頭を切って「8ミリ映画」なんかも作る活動はしていたので、ただたんにボ~~~~としていた高校生でもなかったのだ。
ただ代議員になったのも、文化祭で頑張ったのも、いささか不純な気持ちがなかったわけでは決して無い。
代議員、学校によってはクラス委員長なんて呼ばれる、通常は優等生がやる役目だが、どうしてこんな役目を請け負ったのか。
今では謎な部分だが、そもそも1年生の新学期、クラスのみんなが何処の誰だかさっぱりわからない段階で、なんか「いいこと」発言を私がしたために、クラスで一定の信頼を掴んだことは覚えている。
で、そのあとすぐに行った代議員選挙で見事に男子は私が選ばれた、というわけだ。
嬉しかったのは、選挙で選ばれたということではなかった。
投票用紙に書かれた私の名前が、ほとんど女子生徒の筆跡であったことに喜んだのであった。
8ミリ映画も同じ。
「○○君の作った映画、おもしろいね」
と女子にほめられただけでいい作品ができ、それがきっかけで芸大に進学することになった。
要は、おめでたい高校1年の男子なのであった。
五十嵐貴久著「ダッシュ」は私ほどではないにせよ、年上の先輩女子生徒に憧れる高校の陸上部男子生徒たちが主人公の青春ドラマだ。
そもそもこの五十嵐という作家の作品は「1985年の奇跡」という野球を題材にした小説を読んでいて、それが面白かったので、今回買い求めたものなのであった。
「1985年の奇跡」も明るい、生き生きとした青春ドラマだったが、今回の「ダッシュ」もなかなか楽しい一冊であった。
4人の2年生の男子が。病気になった憧れの先輩女子を励ましていく姿が、なかなか微笑ましくも、恥ずかしい。
だからといって「病弱な少女を支える周囲の人々」といった退屈な構成では決して無く、病気の少女も、弱くなんか無く、主人公の男子4人よりも気が強いくらいのキャラクターなのだ。
爽やかで、スピード感のあるドラマだが、欠点をあえてあげるなら、中高生の読むべき小説だというところかもしれない。
中年のオッサンが青春小説に涙するには、少々甘すぎるクライマックスがあり、例えば川上健一の「翼をいつまでも」のような過ぎ去った青春のキラキラ輝く寂しさのようなものがないのが若干の物足りなさにつながっているちいえるだろう。
ともかく、己の高校時代を振り返りながら、異性にほめられたり、選ばれたりするのは、誰にとってもパワーの湧くことなのだと思った。
聞いてるかい?
我がヨメさんよ。
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