<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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今年で中国の文革が始まって50年になるそうな。

コミュニズムは20世紀に行われた歴史上最大の実験という人がいる。
平等。
財産の共有。
そんなこと成功するわけ無いだろう、という正常な人びとの予想通り、理想の社会を目指した大いなる実験は失敗。
共産主義を標榜した国の多くには資本主義国家以上の格差社会と貧困をもたらされている。
標榜しなくても、組織は今も生き続け多くの社会的歪や傷を残し続けているのだ。

共産主義は当然のことながら多くの歴史や文化を否定してきた。
なんといってもこれまでにない理想郷を目指しているのだから当然といえば当然だ。
否定の方法は半端ではなく、完全に破壊する。
それはISやタリバンがあらゆる偶像や異文化を破壊することに酷似している。
破壊する対象が物だけではなく、人にまで及ぶという恐怖まで共通している。
文化大革命はそういう「完全破壊」のひとつだった。
破壊されたのは中国という文化。
目的は共産主義を達成するためではない。
たった一人の男、毛沢東の私利私欲を達成するためだった。

インバウンドといって多くの中国人が日本を訪れている。
街中で飛び交う中国語。
繁華街には簡体字と呼ばれる中国本土版の漢字の看板やサインが数多く並ぶ。
この簡体字は文化大革命の少し前に誕生した中国本体でのみ通用する謂わば共産中国が生み出した漢字だ。
だから香港ではほとんど使用しないし、外国である台湾は日本同様外国なので使用しない。
この文字を改変するとどういう現象が起こるかというと、文化が断絶する。
もちろん歴史も正しく伝わることが難しくなる。
中国の文化を革命するという意味においては、この簡体字の公式使用がその大きな革命の始まりの1つと言えるのではないか、と私は思っている。

例えばベトナムはフランス植民地前と後では使用する文字が違う。
今ベトナムを訪れると看板はすべてアルファベットで書かれているが、これは19世紀にベトナムへやって来た宣教師が発案し強制したベトナム語の表記方法だ。
元々のベトナムの正字は漢字だった。
ヨーロッパから来た宣教師には大乗仏教を信仰し、漢字を使うベトナム人は「字が読めない」と自分のことを当てはめた結果、文字を改めた。
このため何が起こったかというとベトナム人にとって歴史と文化が分断してしまったのだ。
尤もベトナム人は中国人ほどではないのでしっかりと自分たちの文化と歴史を継承、あるいは復活させているようだが、例えば博物館などへ行くとベトナム人のガイドさんが読めない古文書を日本人の私たちが読めてしまうので複雑な気持ちになる。

またお隣の困った国、韓国と北朝鮮も日本統治前と後では使う文字が違う。
戦後はハングル語で戦前は漢字文化の国だ。
ハングルは11世紀頃に当時の朝鮮王朝の発明によるものらしいのだがその後の王朝が中国びいきでついには自らの文字を捨て、漢字オンリーに。
これを日本統治時代に「朝鮮民族に誇りを」と考えた東京大学の研究者がハングル文字を発掘。
朝鮮半島の教育に用いた所、戦後これが講じてハングル文字一色になって漢字が捨てられるという事態に発展した。
このため現代の韓国人は戦前の自分たちの歴史を知ることが困難で政府発表の嘘を鵜呑みにして「困ったさん」になっている。
ベトナムとの違いは自ら過去の文化を捨て去ったところがいかにも半島の国らしい特徴だが、お隣としては迷惑千万なところだ。

中国も同じ。
ただ目的は過去の歴史と決別し、中国共産党帝国を樹立させ、それを護るだけではなく、拡張することにある。

文化大革命50年。
南シナ海や尖閣諸島を荒らし回ろうとしているところは、文革はまだつづいているといっても過言ではないかもしれない。

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