台風で一日順延になった高校野球夏の大会。
昨年はコロナ禍のために中止になってしまったので、今年の大会は楽しみにしていた。
しかも東京五輪とは休みも開けずに連続開催。
甲子園が終わったらパラリンピックで、パラリンピックが終わったら今年は甲子園でのプロ野球の胴上げが待っているかも知れない。
2021年の夏のスポーツイベントは熱く暑いのである。
で、仕事をしながら開会式から見ようとテレビを付けるといつもと違う光景が映っていた。
選手たちはすでに外野に整列。
観客席は空っぽで、これは東京五輪と同じ扱い。
ただし第1試合の両校の応援団は着席状態。
まったくもって不思議な光景ではある。
無人の甲子園球場。
さぞかし阪神電鉄は儲けが減ることだろう、と少しく気の毒に思った。
やがて式典を始めるアナウンスがあり、いよいよなムードが漂ってきた。
画面はドローン撮影なのか、それともスコアボード上部からの撮影なのか、2塁ベース付近を映し出した。
そこには白いカッターシャツを着た若い男が一人立っている。
「?」
なにやら挨拶をしそうな雰囲気で、
「なんじゃいこれ、高校生の代表か?」
と一瞬考えてしまった。
なんといっても高校野球夏の大会の主催者は「東京五輪中止論者」の朝日新聞。
東京五輪が不都合にも大成功に終わってしまって、なにやら企んでいるのではあるかまいか。
東京五輪大成功の閉幕明くる日に、ケッタイな作家に「オリンピックは失敗」みたいな記事をトップ面に書かせる新聞なので、そのくらいやるかもしれないと考えたのだ。
そんなこんなを思いながら画面を見ていると、その白いシャツを着た男はおもむろにマイクを掴んだ。
「ムムッ?」
その男。
白シャツの男はあの朝ドラ「エール」で「栄冠は君に輝く!」を歌った俳優の山崎育三郎なのであった。
「マジかいな」
ここまで演出するのかと驚いたのは言うまでもないが、このはからいはかなり素晴らしい。
朝日新聞がNHKドラマの登場人物をリアルに起用するなど、どういう風の吹き回しだろう。
しかし、これには驚くとともに大いに別の感情がにじみ出てきたのだ。
そう、この日の2日まえ。
ラジオ放送で聞いた「オリンピック行進曲」を耳にしたときの大感動と似たような感情が込み上がってきたからであった。
結果的にこの山崎育三郎による「栄冠は君に輝く!」といい、オリンピックの行進曲といい、今週は古関裕而ウィークだったんじゃないかという週の始まりなのであった。