「えー、お酒飲まないでくださいね。」
「ちょっとだったら良いでしょう」
「駄目です」
「先生に紹介していただいて精密検査してもらった〇〇病院(大病院)の先生は『週に1度、ビールなら1缶、お酒なら半合ぐらいなら、いいかな』って言ってましたけど」
「その先生はその先生。私は駄目です。」
ということで、ドクターストップお酒ちゃんになってしまった私の晩酌ライフ。
若い頃からの嗜みが、この歳になって数値に現れるという悲劇に見舞われているのだ。
尤も完全にストップするわけにはいかないので、仕事や知人との会食では少しだけ頂戴することにしている。
少しだけになっていることを相手に感づかれないように飲むのが心遣いになっているのだ。
実はここ2年ほど健康診断をするとある数値が標準値を越えていた。
少し気にかかっていたが、健康診断では何らかの異常値が出るものとたかを括っていた。
たぶん少しすると平常値に戻るものだ、とも思っていた。
過去に何回か、その数値は高くなったことがあったが、しばらくすると落ち着いていたからだ。
ところが今回は平常値にならなかった。
「おかしいですね」
と主治医の先生は言った。
「1週間かかりますが、別の血液検査をしましょう」
と、わざわざ外部に出す検査をした。
その検査の結果は、不幸にも良くなかった。
原因は飲酒と脂っこい食べ物ということだがコロナで外飲みは激減。
家でもあまり飲まくなっていた。
体重は会社員を自己退職した時点で117kgもあった。
それが今では80kg前半になっており、夏が終わるころには70kg代にならないかと期待しているところだ。
これは病気で体重が減っているのではなく、食べる量が減って毎月サイクリングで200km以上走ることによる健康的な減量だ。
どうみても病気で痩せているとは思えない外見でもある。
ところが健康になっているはずの体は、長年の無理が祟って相当イカれていたというのが実情だったようだ。
「こりゃもうあかんで」
と訴えていたのだろう。
第二の血液検査でも悪い結果が出たので大きな病院の専門医に検査してもらうほうが良いということになり、3日間ほど入院して検査をしてもらった。
その結果、悪いのは数値だけで関連臓器は至って元気であることがわかった。
まずはメデタシでホッとした。
ところが、専門医の先生も、その結果をお手紙で見たかりつけの先生も、
「酒はいけない。塩分のとりすぎと脂っこいものに注意」
と私に宣告したのであった。
しかも専門医の先生は、
「研究対象を募っているんですが、対象になっていただけますか?」
と言ってきた。
科学のためならと思って承諾したらクオカードをくれたので「ラッキー!」と思ったが、ラッキーなのはクオカードであって、結果的に飲酒禁止というアンラッキーがついてきたのだった。
大学に入学した18歳の時から酒をたしなみ始めて何十年。
二日酔い、三日酔いするようなことも無くはなかったものの、それも若い頃で40代になった頃からは無理な酒はしなくなった。
それでも宴会や交流会ではついつい飲みすぎて、後で反省することもなくはなかった。
でも、それって一般の会社員なら普通ではないか、とも思っていたのだ。
とは言うものの、付き合い酒を断るわけにもいかない。
仕事での会食で相手に気を使わせるのは、決して良いことでもない。
ということで、かかりつけの先生に止められ普段は断酒。
冒頭に述べたように記念日と仕事関係の会食はビール1杯かワイン、日本酒をグラスいっぱいまで。
今のところちゃんと守れていて、今年になって飲んだ回数たったの3回。
家に貯蔵されていたビールはカレーの味付けに使われ処理済み。
今冷蔵庫にはビールの代わりに炭酸水が入っている。
いつまで続けられるのか。
案外、辛抱強い自分自身に驚いてもいるところだ。