<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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17才の牧瀬里穂演じる少女が、どこかから帰ってくる彼を迎えにいくため、懸命に名古屋駅のコンコースを走っている。
BGMは山下達郎の「クリスマス・イブ」。
途中、背広姿のおじさんにぶつかって頭を下げ、やがて改札口へ到着。
ホームにはヘッドライトも眩しい300系のぞみ号が軽快に滑り込んでくる。

というのが20年近くもまえのJR東海のTVCM。
そのTVCMに登場した当時最新型の300系新幹線が引退することになったのだという。
時間の流れの早いこと。
ついこのあいだ登場したと思っていた新型車両はもう消え去る時代になってしまったというわけだ。

国鉄がJRになってからはじめて登場した印象的な新型車両が新幹線300系。
「ひかり」号、「こだま」号に新たに加わったバリエーション「のぞみ」号。
その新規格の超特急に使用された車両は、最高時速270km、東京大阪間2時間30分台で走るので大きなインパクトを与えたものだった。
しかも、当初のぞみ号は名古屋を通過。
京都を出発したら東京駅まで止まらなかった。
この関西圏~首都圏ノンストップは社会的にもショックが大きかった。

さらにさらに、300系は「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」という古のキャッチを思い起こし、営業開始以来たびかさなる故障、故障で、

「離陸するジェット機よりも早く走る300系新幹線は危険なのではないか」

と、あまりの速さに危険を感じることも少なくなかったのであった。

私がはじめて300系のぞみ号を利用したのは東京出張の帰りなのであった。
社会人になって数年しか経過していなかった私は3~4ヶ月に一度、東京出張があっていつも新幹線を利用していた。
その日、お客さんとの打ち合わせが終わってから東京営業所の部長が「ちょっと飲んで帰るか」と夕食を御馳走してくれたので、乗った新幹線が新大阪駅行きの最終列車になってしまったのであった。

最終列車は「のぞみ号」。
のぞみ号が走り始めて一年ほど経過したときだったのだが、なんとなくわくわくしたことを思い出す。

「時速270kmって、どんな感じやろ」

といい年こいた20代のおにいちゃんオッサンであった私は子どものように「のぞみに乗るからね♪」と思ったのであった。

で、その印象は、
「ちょっと怖い」
なのであった。

300系は最新型だったのだが、乗り心地は良くなく、とりわけカーブや、上り坂の終わり部分や下り坂の始まる部分では、「ふわっ」っとした重力変化を感じて、まるでジェットコースターに乗っているような感覚を覚えて不安感が過ぎったのであった。
N700系の乗り心地を思うと、やはり時代の流れは避けられない。

300系新幹線。
忘れがたきクリスマス・エキスプレス。

東海道・山陽から同時に消えてしまうのもあと一年。
乗り納めをしておかなければならない、と思える新幹線なのであった。

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