国際問題や国内の政治経済で常にウォッチしているのが、寺島実郎さんと大前研一さん。
博覧強記、情報収集力、国際感覚に裏付けられたロジカルな分析と解説、そして提言は、一刀両断の鮮やかな切れ味です。
今回は、大前さんの新刊書。
「日本の論点2015~16」
大前研一著
プレジデント社 1600円+税
帯には、「ビジネスマンは最低このレベルの知識を持ちなさい!」
最後の「!」にドキッ、です。
同書は、サイドAとサイドBから構成されており、前者が「復活の秘策」、後者が「世界の視点」。
プロローグでは、日本の抱える1039兆円の国家債務が最重要課題として提言しています。
国民一人1000万円の借金・・・しかもそれが雪だるまのように増え続けている。
でも、その解決に向けた改革努力がなされているとはいえない・・・。
本当に危険なことだと思います。
消費税率10%は1年半後に先送り、後世に負債を先延ばしする政治、日本国債の売りが始まれば国に沈むことになります。
大前さんは、経営コンサルタントとして冷静な分析をされています。
日本の課題は、それだけではありません。
・種切れのアベノミクス
・冷え込んだ中国や韓国との関係
・集団的自衛権と日本の安全保障
・歯止めのかからない少子高齢化
・グローバルな人材を産みだせない学校教育・・・
本当に、ニッポンは、世界最先端の難問課題を抱えています。
そして、
国家債務問題は、歳出を抑える、歳入を増やすことの2つしか解決策はないとし、
超倹約か超増税、あるいはその両方と展開します。
歴史的には、戦争に走った国々もありましたが、
大前さんの解決策の一つは、ズバリ「道州制」の導入。
同書の後半に出てくるドイツの成功に見習えという提言です。
経営コンサルタント的なクールな切り口に納得した次第です。
大前さんが本書で取り上げた論点から一部を抜粋させていただきます。
「オリンピックバブル」に騙されてはいけない
「日本の部長の給料はなぜ、世界最低レベルなのか」
「アマゾンの一人勝ちはなぜ起こるか」
「どこまで続くソニーの一人負け」
「ゴーン退任こそ日産飛躍のベストシナリオ」
「長期衰退を止めるには移民政策しかない」
「スマホで5億円稼ぐ情報の取り方」
「シェールガス革命で浮かぶ会社、沈む会社」
「お金をムダにしないドイツ連邦制の仕組み」
「サムスン電子と心中か?韓国経済の暗雲」
「韓国、中国が狙う、北朝鮮の植民地化とロシアが狙う労働力」・・・
それぞれの論点に対して、大前さんが丁寧に解説。
そして、各セッションの最後に「結論!」として三行で解決策を提示していきます。
たとえば、最初のオリンピックバブルについては、次のような結論を提示されています。
「オリンピックのような国家的イベントが成長のきっかけになるのは、途上国においてだろう。
本当に日本を活性化できるのは、東京の西高東低を是正するような大規模開発だ。」
おりしも、今、衆議院解散で年内総選挙の時期。
大前さんが総理大臣や政府ブレーンになれば、日本の論点の二つや三つ解決するのでは・・・と感じた次第です。
すべてのビジネスパースンに読んでいただきたい一冊。
モヤモヤ感がなくなり、精神衛生上、スッキリします。