萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

文月二十一日、合歓木―Hypnos

2018-07-21 02:54:10 | 創作短篇:日花物語
隣が温かい、
7月21日の誕生花ネムノキ


文月二十一日、合歓木―Hypnos

朝、君の寝顔を最初に見れるなら。

そんな願いごと幾夜に消えて今、シーツの波があたたかい。
青くつもる波やわらかな闇、長い睫の底に君が眠る。

「…おやすみ、」

唇こぼれて闇にとける。
カーテンひそやかな光にシーツ波うつ、空も月に雲ゆくのだろう。
あかるい夜ふる青い闇、まどろむ静謐に寝息やさしい。

やわらかな音、あまい小さな香、どちらも君の唇。

「ほんとなんだ、な…」

つぶやいて見つめて、現実に夜は香る。
まどろむベッドに君がいる、かすかな甘い香、シーツの波に黒髪が光る。
波うつ青色なめらかな髪、はえぎわ白い肌あわい紅潮、きれいで鼓動ゆらされる。

「ふふっ…」

笑ってしまう自分の鼓動に、だって可笑しい。
こんなふう毎晩いつも揺らされるのだろうか、そうしたら自分の心臓どうなるのだろう?

こんなこと考える全て幸せなのかもしれない、きっと。

「しあわせ、だね…」

微笑んで寝顔を見つめて、瞼ゆるやかにシーツ埋む。
何もない視界やわらかな音、あまい小さな香、やさしい吐息かすかな風。
今きっと僕の髪にも月はふるのだろう、あわい青い闇ゆれる波間、なめらかな黒髪きっと僕の髪ふれる。

そうして目覚めて最初、君の寝顔に朝を見る。


合歓木:ネムノキ、花言葉「歓喜、胸のときめき、繊細、夢想、想像力」

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