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萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

秋、森の旋律×William Shakespeare

2022-10-13 15:55:00 | 文学閑話翻訳詩
染まる季節に、
シェイクスピア『Shakespeare’s sonnet』×森の秋


秋、森の旋律×William Shakespeare

How oft, when thou, my music, music play’st
Upon that blessed wood whose motion sounds
With thy sweet fingers when thou gently sway’st
The wiry concord that mine ear confounds,
Do I envy those jacks that nimble leap

いくども、貴方の季節が、僕の音色を、旋律を奏でて
祝福された木を鍵盤に響かすしぐさ
おだやかに揺らす貴方のあまやかな指で
その絃の和音は僕の耳を惑わせて、
軽やかに踊る鍵盤を僕は嫉妬する
【引用詩文:William Shakespeare『Shakespeare’s sonnet128』より抜粋自訳】


写真は二つともよく歩いた黄葉の森ですけど、ひさしぶりに歩きたくってコンナカンジに写真×詩を。笑
もう山の日暮れは早い×寒いので登山の方はお気をつけて・早く越境して山歩けるよーになりますよーに。
【撮影地:栃木県日光市小田代ヶ原2013.10】

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大月十二日、唐辛子―Morgenrot

2022-10-13 00:45:05 | 創作短篇:日花物語
辛辣にも耀く、
10月12日誕生花トウガラシ唐辛子


大月十二日、唐辛子―Morgenrot


目が覚めたのは、君だから。

「ヤッカミってやつだろ、そーゆーのはさ?」

暁闇をバリトン徹る、耳朶を撃つ。
テント踏み出した足もと闇沈む、それでも明ける明星が稜線を笑う。

「オマエが教授の息子だからナンだってんだよ、ソモソモだ、楡原先生がエコヒイキなんざすると思ってんのか?どーだよ馨?」

大らかなバリトンに金星まばゆい、零れる銀色そっと沁みてくる。
さくり、登山靴の底くずれる響きは霜柱。もう冬兆す闇に微笑んだ。

「ん、思えない…あの父だから、」
「だろ?あの先生が学問を裏切るなんざするもんか、甘っちょろい妥協ヤロウにゃアノ時代で留学はできねえ、」

バリトン徹って闇が響く、その先はるか明星が燈る。
ほら嶺風かすめて香りだす、ほろ甘い渋い、清かな大気が頬なぶって笑う。

「楡原先生はボンクラに点くれるようなエセ学者じゃねえよ、人にも学問にも不器用すぎるくらい誠実なホンモノだ。そーゆートコ馨もあるだろ?」

父を讃えて君が笑う、ヘッドライトの下で鳶色の瞳きらめく。
どこまでも耀るい眼差しに笑った。

「ありがとう紀之…その、ぼんくらって誰かイメージして言ってる?」
「おっ、馨もケッコウ毒舌だ?」

低いクセ朗らかな声からり響く、めぐらす谺に雲海が光る。
もうじき夜が明けるだろう、予兆と隣に微笑んだ。

「紀之からうつったかも?」

うつる、それくらい共に歩いた時間。
その新たな瞬間また踏む尾根、ザイルパートナー兼学友が答えた。

「パーソナリティの伝染または環境に育つ後天性か、まあ馨は天賦の素質だろ?」
「素質あったにしても、目覚めさせたのは紀之だよ?」

言い返して笑いたくなる、だって本当に「目覚めさせた」のは君だ。

『だって有名な学者の息子だろ、』

ずっと言われ続けてきた、何度も何度も。
そうして硬くなって、けれど笑っている今をバリトンも笑った。

「目覚めさせたって、最初から馨ずっと俺にはコンナだろが?」

ほら笑ってくれる、明朗このトーン。
このトーンに自分どこか自由になってしまう、そのままに山の大気はらんで笑った。

「父はね、大学に入って田嶋君といるようになって変わったって言うよ?」
「あー、楡原先生が仰るならそうなのかあ?」

バリトンが笑う、低いクセ朗らかに徹って弾む。
この声ずっと先も聴けたらいい、想い見つめる稜線に一閃はしった。

「夜が明けるぞ、馨、」

紺青ひろやかな天穹の涯きらめく、青から紫うまれて朱が燃える。
頬ひるがえる冴えた風、凍てつく呼気ふっと白く朝が光った。

「夜明けだね、紀之、」

星々の光芒おおらかに瞬く、暁闇ふかく朱い山嶺が目覚める。
耀くモルゲンロート、僕の朝だ。


唐辛子:トウガラシ、花言葉「旧友、辛辣、嫉妬、雅味、生命力、悪夢がさめた」/Morgenrot :モルゲンロート、朝焼けに赤く染まった山

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