萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

大月二十日、竜胆―assuage

2022-10-20 21:35:19 | 創作短篇:日花物語
癒しの背をおって、
10月20日誕生花リンドウ竜胆


大月二十日、竜胆―assuage


絶筆、それとも絶写。

「どっちにしてもね、おじいさんが最後に見たものだね?」

声かける先、青紫一輪ほころぶ。
茶、黄、緑青、秋枯れ深い色彩に浮かぶ花。
この花いつも何度も見つめてきた、あの写真のままだ。

『もう少し大きくなったら登るんだ。そうしたら、おじいさんが見た世界を見られると思うよ、』

ほら声が蘇る、あの日、焼香ほろ渋い風の声。
あのとき微笑んでくれた瞳は深く泣いていた。あの眼差しは今、この自分を見るのだろうか。

「…元気かなあ、鷹居のおにいさん、」

おにいさん、そう呼んで笑ってくれたひと。
青い制服姿もカーキ色の隊服姿も似合っていた、それから赤い登山ジャケットも。
あの青年は今もう壮年になるだろう、それでもたぶんきっと、あの日のまま綺麗な眼だ。

「鷹居のおにいさん、今日も山で誰かに寄り添ってる?」

呼びかけて懐かしい、まだ幼かった自分と、それからあの青年。
あの雨の夜あのとき泣いてくれたひと、あの背中に負われて祖父は帰ってきた。
そうして自分はひとつ未来を決めて、今、祖父が亡くなったこの場所に立っている。

「もう高校生になったよ、山岳部に入ったんだ…おじいさんの後輩だよ?」

想い声になる。
その唇かすめる風、ほろ渋い甘い乾いた香。
もう秋、そんな色彩やわらかに頬ふれて、森が光る。
竜胆:リンドウ、花言葉「誠実、正義・正義感、的確、苦悩、固有の価値、あなたの悲しみに寄りそう、悲しんでいるあなたを愛する」


にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村
純文学ランキング
著作権法より無断利用転載ほか禁じます

萬文習作帖 - にほんブログ村
PVアクセスランキング にほんブログ村
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

秋簪、黄金森の紅葉

2022-10-20 08:34:00 | 写真:山岳点景
朱そめる一枝、黄金の森うかぶ秋簪
山岳点景:カエデの紅葉2013.10.6


写真の紅葉は@この3年歩いていない森、毎秋ずっと歩いていた場所なのでヒサシブリ行きたいところです。
ケッコウ広い森なんですけど、足もと段差×木の根×岩がわりと多い+水場トイレ離れて2か所×冬季使用不可、店も周囲マッタクない大自然マッタダナカ=登山装備必須ルート。
どこの山も森でも自分の安全×環境保全どちらも危険だらけ、足元よーくチェックして足場を決めて×離れた所から望遠レンズ&三脚ナシで撮影できる技術が不可欠になります。
また秋は野生動物にとって冬支度のとき、食べこむため餌や獲物を追いかけて人間と鉢合わせ→人身事故なんてこともザラです。
秋はトリワケ山の日暮れ早い×寒いので登山の方はお気をつけて。
【撮影地:栃木県奥日光2013.10.6】

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村
純文学ランキング
著作権法より無断利用転載ほか禁じます

萬文習作帖 - にほんブログ村
PVアクセスランキング にほんブログ村
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする