萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚370

2015-08-05 21:00:10 | 雑談寓話
From:御曹司クン
本文:おひさしぶりです、元気ですか?
  たぶん大事な人を傷つけました。俺のせいだって解ってるけど。
  でも嘘つくこともできない、どうすりゃいいのかわかんねー。
  もうホント全部終わらせたい。

なんて御曹司クン’sメールが送られてきた12月、
メール内容から架けた電話、御曹司クンは訊いてきた、

「おまえが電話してくれたのってさー…俺のため?それとも彼女のため?」

オマエのため、

って言ってほしいのは見え見えで、
だからこそイジワル半分で言ってやった、

「自分がスッキリさせたいだけだよ、で、あのメール何を言いたいワケ?笑」

もうホント全部終わらせたい。

なんて一文はいかにも思わせぶりだ、
こーゆーこと言ってくるとき「終わらせたい」と本気で想うヤツは少ない、
で、案の定だけど御曹司クンは言ってきた、

「なあ、会って話せねえかな?」

ほら交換条件やっぱり出してきた。
よーするに会わないと話さないってことなんだろう、で、その人質に笑った、

「花サンのことナンカ傷つけたんだろ?挨拶したくないとか結婚したくないとかナントカ言ったわけ?笑」

たぶんそんなことだろう、花サン会話@秋の小田代が原からして?
そんな推測どおり電話の声がキョドった、笑

「…っ、な、やっぱしゃべっちゃってんのかよそこまで?」

ある意味「やっぱ喋っちゃってる」だろう。
けれど多分きっと未知の近況がある、その推定ほうり投げてみた。

「おまえツキアイマスの挨拶いまだにしてないんだってな、花サンのご両親にしたら怒ってアタリマエだろ?」

秋、小田代が原へ行く朝の会話からしてソンナことだろう?
あのとき花サンのお母さんが言ったコトからの推定に御曹司クンますますキョドった、笑

「だ、ってさーツキアウったって正式に申し込んでつきあったりしてねーし、俺なんんんっもそんなんじゃねーしさ」

どもるような口調、それは仕方ない。
けれど言ってる内容は仕方なくない、率直なトコ呆れて笑った、

「おまえさ、二十代も半ば過ぎたら結婚前提のツキアイくらい常識だろが?それも心得ないでヨソサマのオジョウサンに手出したとかバカだろ?笑」

ホント馬鹿だ、そんなことは?
こんなこと心ドウナルカ解かっているんだろうか、その心配に言ってやった、

「っていうかさ、花サンの手首の傷もうオマエは知ってるだろが?アレぶりかえさせたらオマエの所為だぞ、」

花サンの手首は傷痕だらけ、それはまんま心の傷だ。

その傷ついてしまった哀しい理由を御曹司クンだって今は知っている、
知っているからこそ肚もたつ、それを知ってか知らずか電話相手は言ってきた、

「だからってしたくもない結婚するのかよ?彼女が満たされるんならさー俺の心はどうでもいいのかよ?」

どうでもいい、なんて誰にもない。

そんなこと大前提だ、でもここで優しいコト言ってドウなるのだろう?
そんなこと考えながらトリアエズすっ飛ばして訊いてみた、

「で、オマエが会って話したいことって何?」
「…なにって、それは会ってから、」

また堂々巡りな回答くちごもる、
こーゆー態度されるだろうことは想定内だ、で、呆れながら笑った、

「仕事帰りで良ければ21時横浜とかだけど、店どこも空いてなかったらソッコー帰るよ?笑」

ホント会ったトコロでどうなるんだろう?
そんな疑問と呆れる電話ごし、ちょっと元気になった声が言った、

「ちゃんと予約するっ、今週の金曜とかOK?」

なんだか急展開な話だな?また呆れながらもトリアエズ応えた、

「木曜ならイイよ、ただし1時間だけな?笑」
「1時間でも嬉しいってば、なー…?」

即答で笑って、そして語尾が「?」になる。
そこにドンナ心の動きがあるんだろう、解かるようで気づかないフリに笑った、

「急に仕事いそがしくなったらドタキャンするけどな、笑」
「う、また弩エスだー、」

罵る言葉かえしながら、でも声はなんだか嬉しそうで、
そんな相手の顔が見えるような電話を切って、ついベッド転がって考えた、

なんだって花サンはコンナヤツに惹かれちゃったんだろう?

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