送別、その灯
第83話 辞世 act.4-another,side story「陽はまた昇る」
「はい、すぐ行きます、」
応えて携帯電話ポケットにしまう。
すぐ扉また開けて戻った席、温かな湯気ごし笑いかけた。
「すみません、仕事で呼びだされました。先に失礼させて頂きます、」
嘘じゃない、でも隠している。
本音しまいこんだままダッフルコート手に財布だして、けれど恩師が微笑んだ。
「湯原くん、今日は私がご馳走しますよ?もし気になるなら聴講のとき学食のランチおごって下さい、」
おごってください、なんてこの人も言うんだ?
―青木先生がこんなこと言うって、初めてだよね?
こんなこと意外で驚かされる。
なぜ今日に限ってなのだろう?不思議で、けれど素直に頷いた。
「はい、ありがとうございます…美代さん、中座してごめんね?賢弥もごめん、」
ほんとうに、今日こんな日にごめん。
―ごめんね美代さん、このあとも約束してたのに、
今日このまま一緒にいてあげたかった、けれど電話ひとつ呼ばれている。
時間もう気になりながらコートはおる隣、友達も立ちあがった。
「湯原くんを駅まで送ってきます、また戻りますね?」
頭下げる華奢な肩はベージュのコートもう着ている。
いつのまに支度したのだろう?驚いて首かるく振った。
「僕は大丈夫だよ美代さん、青木先生と賢弥とのんびりしてて?」
「いいの、また戻るから、」
ぱさり、紅桃色のマフラー結わえて微笑んでくれる。
その瞳なにか泣いているようで、そんなテーブル越し闊達な声が笑った。
「周太、小嶌さんの言うことは聴きなよ?このあとの約束キャンセルするんだからさ、これくらい言うこと聴いとけな?」
キャンセルする分だけ聴き入れよう?
そう提案してくれる笑顔は眼鏡の眼差し温かい、その隣から恩師も微笑んだ。
「そうですよ湯原くん、女性の申し出は素直に受けましょう?私たちは待っていますからね、安心してください、」
待っています、安心して。
こんな言葉ありきたりだろう、きっと日常だ。
けれど今はやたら響いてしまう、その本音ため息と頷いた。
「はい、じゃあ、」
頭また下げて席はなれて、その後ろ華奢なコート姿ついてくる。
ふたり扉へ歩いて、かたん、カウンター開いて太い声が呼んだ。
「兄さん、また来てくださいよ?」
また来てください。
そう言われるのは毎度のいつもと同じ。
でも今は「いつも」が泣きたいほど愛おしい、そんな本音から周太は笑った。
「はい、また来ます。たくさんご馳走様でした、」
たくさん、本当にたくさんご馳走になった。
この笑顔に温もりに自分はどれだけ馳走になったろう?
ただ優しい記憶から笑いかけた真中、カウンター前の笑顔は沁みとおるほど明るい。
(to be continued)
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第83話 辞世 act.4-another,side story「陽はまた昇る」
「はい、すぐ行きます、」
応えて携帯電話ポケットにしまう。
すぐ扉また開けて戻った席、温かな湯気ごし笑いかけた。
「すみません、仕事で呼びだされました。先に失礼させて頂きます、」
嘘じゃない、でも隠している。
本音しまいこんだままダッフルコート手に財布だして、けれど恩師が微笑んだ。
「湯原くん、今日は私がご馳走しますよ?もし気になるなら聴講のとき学食のランチおごって下さい、」
おごってください、なんてこの人も言うんだ?
―青木先生がこんなこと言うって、初めてだよね?
こんなこと意外で驚かされる。
なぜ今日に限ってなのだろう?不思議で、けれど素直に頷いた。
「はい、ありがとうございます…美代さん、中座してごめんね?賢弥もごめん、」
ほんとうに、今日こんな日にごめん。
―ごめんね美代さん、このあとも約束してたのに、
今日このまま一緒にいてあげたかった、けれど電話ひとつ呼ばれている。
時間もう気になりながらコートはおる隣、友達も立ちあがった。
「湯原くんを駅まで送ってきます、また戻りますね?」
頭下げる華奢な肩はベージュのコートもう着ている。
いつのまに支度したのだろう?驚いて首かるく振った。
「僕は大丈夫だよ美代さん、青木先生と賢弥とのんびりしてて?」
「いいの、また戻るから、」
ぱさり、紅桃色のマフラー結わえて微笑んでくれる。
その瞳なにか泣いているようで、そんなテーブル越し闊達な声が笑った。
「周太、小嶌さんの言うことは聴きなよ?このあとの約束キャンセルするんだからさ、これくらい言うこと聴いとけな?」
キャンセルする分だけ聴き入れよう?
そう提案してくれる笑顔は眼鏡の眼差し温かい、その隣から恩師も微笑んだ。
「そうですよ湯原くん、女性の申し出は素直に受けましょう?私たちは待っていますからね、安心してください、」
待っています、安心して。
こんな言葉ありきたりだろう、きっと日常だ。
けれど今はやたら響いてしまう、その本音ため息と頷いた。
「はい、じゃあ、」
頭また下げて席はなれて、その後ろ華奢なコート姿ついてくる。
ふたり扉へ歩いて、かたん、カウンター開いて太い声が呼んだ。
「兄さん、また来てくださいよ?」
また来てください。
そう言われるのは毎度のいつもと同じ。
でも今は「いつも」が泣きたいほど愛おしい、そんな本音から周太は笑った。
「はい、また来ます。たくさんご馳走様でした、」
たくさん、本当にたくさんご馳走になった。
この笑顔に温もりに自分はどれだけ馳走になったろう?
ただ優しい記憶から笑いかけた真中、カウンター前の笑顔は沁みとおるほど明るい。
(to be continued)
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