prelude of Tisiphone
未来点景 soliloquy 堕天使―another,side story
君を追う、だって椿が咲いた。
「…っ、」
駆け下りる階段に足が跳ぶ。
一段とばし駆けて、駆けて、古材ステップ軋む。
それでも追いつかない玄関ホール、あった革靴を履いて呼ばれた。
「周太くん?シャツ一枚じゃ寒いわよ、」
落ち着いた深いアルト、でも驚いている。
その眼ざし背中のまま扉を開いた。
「待って!周太くんっ、」
アルトが呼ぶ、でも待てない。
だって椿が咲いてしまった、見つけた一通のままに。
「…しゅうたくんっ、…」
駆ける、アルトが遠く遠く呼ぶ。
飛石を駆けて芝生を踏んで、青草やわらかな香に深紅が燈る。
駆けても視界こまやかに深紅がゆれる、あの花に君が残した謎、その一通が。
―…この椿でいいかな、周太?
深紅に記憶が問う、もう遠い春の聲。
あのとき幸せだった、君の隣で春を見ていた。
「…っ、」
がたんっ、
門を押し開けて道、でも深紅まだ燈る。
視界のはしっこ花はゆれる、深く黒いのに透ける紅。
あの花は君に似合うと想ってしまった、その言葉も知らないで。
―…知ってる周太?この花の意味、
記憶が笑う、きれいな綺麗な笑顔。
あの笑顔まだ間に合うだろうか、黒く染まってしまう前に?
願い掌一通ごと握りしめて、駆けだす道に一通の手が映る。
―…山で生きたいんだ、山で命を救って、
白皙の笑顔、きれいな綺麗な笑顔、その手も美しい。
長い指の手あちこち傷痕うかぶ、火傷、裂傷、無数の傷。
その傷すべてが命の軌跡、君の誇りで、そして君が生きた時間。
「…えいじっ、」
呼んで、願う。
どうか春告げる花、紅いままで。
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周太another,ss予告編@第85話+XX日
未来点景 soliloquy 堕天使―another,side story
君を追う、だって椿が咲いた。
「…っ、」
駆け下りる階段に足が跳ぶ。
一段とばし駆けて、駆けて、古材ステップ軋む。
それでも追いつかない玄関ホール、あった革靴を履いて呼ばれた。
「周太くん?シャツ一枚じゃ寒いわよ、」
落ち着いた深いアルト、でも驚いている。
その眼ざし背中のまま扉を開いた。
「待って!周太くんっ、」
アルトが呼ぶ、でも待てない。
だって椿が咲いてしまった、見つけた一通のままに。
「…しゅうたくんっ、…」
駆ける、アルトが遠く遠く呼ぶ。
飛石を駆けて芝生を踏んで、青草やわらかな香に深紅が燈る。
駆けても視界こまやかに深紅がゆれる、あの花に君が残した謎、その一通が。
―…この椿でいいかな、周太?
深紅に記憶が問う、もう遠い春の聲。
あのとき幸せだった、君の隣で春を見ていた。
「…っ、」
がたんっ、
門を押し開けて道、でも深紅まだ燈る。
視界のはしっこ花はゆれる、深く黒いのに透ける紅。
あの花は君に似合うと想ってしまった、その言葉も知らないで。
―…知ってる周太?この花の意味、
記憶が笑う、きれいな綺麗な笑顔。
あの笑顔まだ間に合うだろうか、黒く染まってしまう前に?
願い掌一通ごと握りしめて、駆けだす道に一通の手が映る。
―…山で生きたいんだ、山で命を救って、
白皙の笑顔、きれいな綺麗な笑顔、その手も美しい。
長い指の手あちこち傷痕うかぶ、火傷、裂傷、無数の傷。
その傷すべてが命の軌跡、君の誇りで、そして君が生きた時間。
「…えいじっ、」
呼んで、願う。
どうか春告げる花、紅いままで。
紅椿の花言葉“You’re a flame in my heart 君は僕の心臓に燈る炎
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