恩田陸著 筑摩書房2024
面白く読んだ。正直、バレエは時々、付き合いもあって観るが、あまり好きでない。例えば、表現したいものが10だとして、歌舞伎はデフォルメして20、狂言はシンプルに7、能は削って削って観客のイマジネーションに委ねて3。日舞は9~11くらいと中途半端。同じことがバレエにも言えるのかなあと。わかりにくいことも多いし、過剰だと感じることも多い。要するにこちらが、観客として見方が分かってないのだろうと思う。そんな不肖の観客が、こういう視点で観れば面白いかもなあと、随所で感じさせてくれたのが本作である。
四章からなる。主人公のHALを四人の視点で描く。オーバーラップして、観方によってこんな違うんだというエピソードもあれば、独自のエピソードもある。バレエのワークショップで出会った同世代の日本人ダンサー、主人公を見出したバレエの先生、コンビを組む作曲家、そして本人。芸術論、異文化との葛藤、LGBTといった要素が上手く散りばめられている。最初、読み始めて、イメージしたのはりゅーとぴあの金森穣だった。巻末の協力者のクレジットのトップに彼があった。多分、イメージのきっかけにはなっているのだろう。
蜜蜂と遠雷は、複数のコンクール参加者を描いたが、今回は一人を複数の視点で描いている。蜜蜂と遠雷の時は、ピアノの森のパクリかよと感じる場面もなきにしもあらずだったが、今回は純粋に楽しめた。
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