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Pretenderの備忘録

技術革新と不平等の1000年史 上・下

2024-07-07 18:26:42 | 読書
ダロン・アセモグル&サイモン・ジョンソン著 早川書房2023

テクノロジーの歴史とそれが社会に対してどんなインパクトがあったかを通説を超えて、格差という観点からも分析する。しかしながら、マルクス経済学のアプローチではない。歴史学と近代経済学と欠けていた新たな視点というところだ。ノーベル賞の前段階と言われるジョン・ベイツ・クラーク・メダルを受賞した著者である。

上巻が歴史中心で、ちょっと読むのに苦労したが、下巻は最近の話題からGAFAからAI、そして民主主義の危機までを論じる。結語的なテクノロジーの方向転換というのは、まだまだ深い検討が必要ではあるが。

巻末の文献の解説と出典は素晴らしい。筆者たちのアプローチを学問的に先行研究に照らして論じる。章ごとにもきちんとしたそうした解説がつく。知的な水準を落とさず、わかりやすく、素晴らしい書籍だ。
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アメリカ映画の文化副読本

2024-07-04 22:06:46 | 読書
渡辺将人著 日経BP 2024

アメリカ政治を専門とする筆者が、アメリカ映画を通じて、都市と地域、社交と恋愛、教育と学歴、信仰と対抗文化、人種と民族、政治と権力、職業とキャリアに分けて論じている。必ずしもきれいに切り分けられるわけでもないが、映画やドラマへの愛を感じる。ドラマで、なぜこれがないのかというのも、何本かあったけど、(笑)。全部は観ていないが、かなり観てるなあというのが実感。そして、推薦図書があるのだけど、それがほぼ全部読んでいて、なるほどなあと納得した。
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歌舞伎音楽事始

2024-06-23 10:46:00 | 読書
音を聴く 深く観る 土田牧子著 NHK出版2024

良い本が出たなと思った。著者はなんと藝大の楽理の博士、凄い。。。歌舞伎音楽とは、楽器の解説、歌舞伎音楽のジャンル、歌舞伎音楽の歴史。そして、具体的な演目の解説や演目ごとの聴きどころの解説と最後に演奏家インタビュー。そして巻末に用語集もつく。
図書館で借りて読んだが、欲しくなってアマゾンで注文した。
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日本のクラシック音楽は歪んでいる

2024-06-10 10:34:08 | 読書
12の批判的考察 森本恭正著 光文社新書2024

非常に面白かった。批判は重複があったり、レベルが合っていなかったりするものの、へえーってことが多かった。
西洋音楽の受容の歴史は勉強になったし、他の音楽(ロック、ジャズ、演歌、「三味線等邦楽」)との違いも、バロックや軍の歴史を踏まえて、非常に面白かった。
吉田秀和批判は、彼の音楽的な素養に対する批判と、彼が検閲をしていたという経歴に対する批判は分けて論じるべきであると思った。この点については、きちんと検証する研究者が出てきてほしいところだ。
音大については、それは西洋音楽をやるために、芸大や桐朋に留学する外国人がいるとも思えないので、ある意味納得。
語学が重要というのは分かるが、ロシアについてはどう考えるのだろう。あるいはほかのアジアの国々はどうなのだろうと、思った。
参考文献を示すのは、ひけらかしで愚というが、それは違うだろう。フェアに拠って立ったところを示すということで、示さないことこそ愚であろう。

さて、本書についての、現在の日本の音楽評論家諸氏はどう反応するのか非常に関心がある。

批判1 日本のクラシック音楽受容の躓き
批判2 西洋音楽と日本音楽の隔たり
批判3 邦楽のルーツ
批判4 なぜ行進は左足から始まるのか
批判5 西洋音楽と暴力
批判6 バロック音楽が変えたもの
批判7 誰もが吉田秀和を讃えている
批判8 楽譜から見落とされる音
批判9 歌の翼
批判10 音楽を運ぶ
批判11 現代日本の音楽状況
批判12 創(キズ)を造る行為
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センスの哲学

2024-05-26 14:43:00 | 読書
千葉雅也著 文藝春秋2024

非常に売れているようだ。東大や京大生協で売り上げ一位らしい。浅田彰が売り上げ一位だった頃を思い出した。
美学にも造詣が深い哲学者が、権威主義的でなく、わかりやすくセンスを論じている。そのままを受け入れ、権威主義的な意味づけから離れて楽しむということなのかな。

ウイングを日本の伝統芸能にも広げてほしいなあと思う。

権威(例えば昔はミシュランが指針として必要だったが、今では。。。)を崇めて自分がセンスがあると勘違いしている人、変に自信を失ってセンスを発揮できない人、が手に取って読むべき本か。

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