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Pretenderの備忘録

スーパー大陸

2020-03-31 22:58:11 | 読書
スーパー大陸 ユーラシア統合の地政学
ケント・E・カルダー著

非常にエキサイティングであった。
今日の世界情勢を、ユーラシア大陸という切り口で、見せる。
中国が主人公ではあるが、ユーラシア大陸に位置づけ、欧州やロシアとの関係もユーラシア大陸という視点である。そして、そこにアメリカはどう対処するのかという問題意識がある。大きな鳥瞰図から、各国の思惑を事例として取り上げる。地図やデータも豊富に挿入されている。キンドルバーガーやギルピンの国際政治経済の知見、マッキンダー、マハンの地政学の知見が土台にある。非常に分かり易く、頭にも入ってきやすいものであった。一帯一路についても、よく理解できた。
日本についてもアメリカの大切な同盟国として触れられてはいるものの、日本はどう考えるのか、国際社会の中で経済的なプレゼンスが小さくなっていく中での選択を迫られる日は遠からず来るであろう。タイミングを逃すと、なんのインパクトもない存在になるだろう。

ユーラシア大陸ということなので、当然だが、中国は一帯一路を超えて、今回のWHOにみられたように、アフリカにも触手を伸ばしているし、国際機関もIMF・世銀以外に目を向ければ、中国支配ともいえる状況になりつつあるということは、出てこない。

こうした本を久しく読んでいなかった。非常に、懐かしい、興奮を覚えた。


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漱石全集

2020-03-28 21:39:33 | 読書
2016年12月から刊行が続いていた漱石全集が完結した。全28巻。

私は一漱石ファンとして、全集を予約して購入した。箱入りのハードカバーは、かさばるけど、まあ、こういうのも良いだろうと。実はちくま文庫の全集は持っていて、二セット目の全集である。値段は4000円から6000円くらいだったが、最後の索引だけ、9900円でびっくりした。厚さは変わらないのに。

岩波は最初の頃は宣伝していたが、途中からいつ配本になるかも、HPのアップデートもされず、なんかなあという感じであった。もう少し、全巻予約をした人たちを大切にして欲しい。どのくらいいるのだろうか?

漱石は日本の作家の中で最も読んでいる。十年に一度読んでいる。10代の頃は、猫はわからずに読み、坊ちゃんはなんとなくイメージが沸き、こころも分かった気分になっていた。全集を初めて読んだ20代は三四郎池で三四郎を手に佇んだ。30代は門やそれから。40代で、草枕の智に働けば角が立つ、兎角この世は住みにくい、がずっしり来たが、漱石は30代で書いているのだ、早熟の天才。

この全集の一巻目の猫をパラパラみていて、漱石が謡をやっていることを今更ながら確認したり、まだまだ新しい発見は尽きない。
いくつまで生きられるかわからないが、十年に一度、定点観測として、漱石全集を読んでいきたい。
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クラシックへの挑戦状

2020-03-27 22:07:57 | 読書
大友直人著

非常に興味深く読んだ。

大友氏の演奏は、マーラーとか、私の好みの時に何度か聞いた。あと、三枝さんのオペラ、滝の白糸や広島等、話題になるものを聴いている。外さない指揮者だなという印象はあるが、正直、あまり強い印象は残ってない。また、背が高く、ルックスも良く、カッコつけてるなという色眼鏡で見ていたと思う。

生い立ちについては、初めて知ることばかりだった。彼の同世代はみんな海外でキャリアを積んできたが、なぜ行かなかったのかと思っていたが、それについては、良くわかった。現在は、欧州の歌劇場に若い有望な日本人がいると聞いているが、結局小澤さん以降、日本人は海外に出たが、箔を付けて帰国してというのが現状になっている。そういう中で、日本で、葛藤もあったろうが努力してきたことは、評価できると思う。また、小澤さんに対して、喧嘩を売るとまでは行かずとも、かなりアンチテーゼ的なことを書いたのも、勇気が要ったことだろう。

ポピュラーを聴くのは驚いたが、そのアーチストの一人に私が大好きなリンダ・ロンシュタッドが入っていたのは何か、嬉しくなってしまった。

日本人がクラシック音楽をやる意味、日本でのクラシックのあり方等、いろいろと考えているのだなと思った。時々、歌舞伎座で見かけるが、それも、クラシック界を考えるヒントとしているのだなと感心した。たまには、一階でなく、一幕見とは言わないが、三階でも観てみると、またヒントがあるかもしれない。

あと、佐村河内氏のことをきちんと書いていることはとても、フェアで好感が持てた。
あの事件のあと、大賀ホールで、堤さんのバッハ無伴奏全曲演奏会があった。夫妻で聴きにきていらしてて、たまたま、軽井沢駅のカフェで、近くの席だった。バッシング直後くらいだったので、一言「頑張ってください」と思わず声をかけてしまった。奥様が、カレーを食べながら、「恥ずかしいところ見られちゃったわ」と笑っておっしゃっていたのが、微笑ましかったという、思い出がある。

次回、何を聴くかまだ決まってないが、楽しみになった。
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<内戦>の歴史

2020-03-26 11:28:38 | 読書
デイヴィッド・アーミテイジ著

難しい本だった。歴史学者が内戦とは何かをローマから現代までを俯瞰しながら論じる。内戦に関する思想史という。学生時代だったらもっと、頭に入ってきたかもしれない。翻訳もけして読みやすくないし、序章、終章、解題と、本章が今一つリンクしているイメージがわかない。

歳をとって、経済の手垢にまみれた、ということだろうか。
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三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実

2020-03-25 14:34:10 | 映画
監督:豊島圭介
出演:三島由紀夫 芥正彦 木村修 橋爪大三郎 篠原裕 宮澤章友 原昭弘 椎根和 清水寛 小川邦雄 平野啓一郎 内田樹 小熊英二 瀬戸内寂聴
ナビゲーター:東出昌大

全共闘世代なのかなという人から若者まで老若男女で満席。

非常に面白かった。
まず、三島のユーモア、明るさに驚いた。自分を大きく見せたいのかもしれないし、あるいは学生と連帯したいような気持もあったのだろう。話の節々にでる知性、知性に裏打ちされているから反知性主義を標榜できる自信。寂聴よりも年下なんだよなあ。もう少し生きていたらどうだったろう?石原慎太郎なんか、かき消されたんじゃないか。全共闘を全学連というのは、あれは故意かなw。

美しい文学を書く三島、直接接点があった人から聞く俗物としての三島、そして若者にマウントを取りながらも期待もしている三島、盾の会等の映画で描かれた三島、何が本当なんだろう、全て本当なんだろう。

全共闘学生のその後は、面白かった。人生は勝ち負けではないという感覚はわかるのだが、勝ち負けだと思いながら、負けていないと言っているように聞こえた。ある意味、彼らが批判した権力のような無謬性を自分たちに課しているように。でないとすべてが崩壊してしまうということだろうか。三島の文学には滅びの美学がある。美しい敗者というのがこの国には、例えば敗者の精神史等に見出すことができるが、全共闘の人たちにはそうした潔さを感じなかった。

その他、寂聴他、インタビューに出てくる知識人。面白かった。橋爪大三郎がちょっと霞んで見えた。内田、平野、小熊は、思想的に三島とは相容れないとは思うのだが、好きに近い敬意を感じた。

語り、タイミング悪かったが、不倫騒ぎがなくても、ちょっと違ったよな。彼の豊穣の海は観たが、想定内の下手さだった。足は長く、顔は小さかったが。声が良いとも思わないし、声に深みや知性を感じないのだ。三島の映画を演じた、井浦とかの陰りのある語りが良かったのではないか。

今年は没後50年である。
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