さて、大洲を後にして、わたしたちはまだ行くところがありました。 それは・・・・
松山市城山公園特設会場で行われる薪能でした。
看板には10月1日と出ていますねえ。
あらら、もう2週間もたってしまったのか。 どうしよう、ネタがどんどん古くなっていく。
駐車場探しに手間取ったこともあって、開演前に食事をと思っていた時間はすでになく、空き腹を抱えての能鑑賞となりました。
広い公園の中の休憩所(画面右)の隣に、紅白の幕で仕切られた空間がありました。 左に見える大きな木はこの公園のシンボルツリーらしいです。 ここんとこ、よく覚えておいてくださいね。
特設舞台はこの幕の中に作られていました。 目の前に二の丸、遠くには天守閣が見えます。
舞台は柱の代わりに竹を立て縄で囲っただけの簡単な造りです。舞台奥の、通常松の絵が描かれている板壁はなく、舞台の周囲は開けっぴろげです。
いつもは天守閣のある山頂広場で行われていたのですが、会場が狭いためできるだけ大勢の人が観られるよう今回初めてふもとの公園で行うことにしたそうです。それが良かったのか悪かったのか・・・・・・
確かに会場はほぼ満席。 着物姿の若い人もちらほら見えます。 松山の能人口は多く、大学生の中にも能をたしなむ人がいると聞きました。
ただし、わたしは全くの素人で、ただあの雰囲気を楽しむだけの観客です。
日暮れに近くなり、開演の時刻が迫ってきましたよ。
と、突然、城山からからすが一斉に飛び立ちました。
かあかあと騒ぐからすたちを見上げて、一同唖然。 公演中だったらどうなっていたかしら。
これがハプニングのはじまりだったかも・・・・
よく幽玄の世界とかいいますが、それは演じる者だけではなく、独特の音楽と舞、薪の火花や煙、すべてが混沌と混じり合って生まれてくるものだと思います。 ド素人のわたしには、解説をじっくりと読み、地謡やセリフを耳をそばだてて聞いて分かる単語を拾い出し(英語を聞くのとどっちがよく分かるかーのレベルです)、演技者の一挙一動を凝視して、やっと入り込める世界なのですが、
今回の演目は素人には難しすぎました。
最初の舞囃子は、面も着けず袴姿で舞うもので、芸にごまかしのきかない立派な舞、人間国宝の舞です。だけどなんせ、じみ~
そして背面に壁のない舞台は音が分散して大鼓や小鼓も響きにくく、床を踏みならす音もいまいち迫力がありません。
そういえば昼間行った臥龍山荘の壱是の間は、能舞台にも使うため、床下には音響をよくするために備前の大壷を何個もおいているそうな。
狂言は、演目上座っての演技が多く、前の人の頭の陰でほとんど見えず、
最後の能「蝉丸」も、盲目の蝉丸と心を病んで放浪する姉との再会を描いた、どちらかというと内面描写の難しい静の演技が要求される物だったと・・・・・・つまり盛り上がりに欠ける、ということですわね。
最初の舞囃子の時から聞こえてくる、電車のきしむ音、救急車の音、広場で子どもたちがはしゃぐ声、そしてぶつぶつという話し声。
しばらくたってから、その話し声が幕の外の休憩所から聞こえるということに気がつきました。 それも入れ替わり立ち替わり。 そしてついに、蝉丸が従者と涙の別れをする場面で
男性二人の高笑い
たまりかねた観客の若い男性二人が席を立って行きました。 それでしばらくは静かでしたが、今度は遠くから、マイクを通した女性の華やいだ声。それもだんだんとエスカレートしてきたような気がします。やがて
蝉丸と自分の不幸を歎く姉の宮の舞が終わり、分かれ去ろうというときになって
○○番の方いらっしゃいませんか。 らくれん牛乳さんからなんとかを提供していただきました。ありがとうございました。
華やいだ声が一段と大きくなりました。
どうやら、公園の向こうの端で開かれていた「ほろよいフェスタ」で抽選会が行われているらしいです。
ああ、どうしていつものように山頂広場か、二の丸庭園でしなかったんでしょうね。誰でもが自由に楽しめる公園で、しかも休憩所の真横で、その上に、ほろ酔いフェスタと同時開催なんて!
まあ、料金が安かったから許すけど。
それでも去りゆく姉宮と、見えない目で見送る蝉丸の姿には心打たれました。
すべてが終わって幕の外に出てみると、
会場すぐそばのシンボルツリーに、明かりがともってここにも人が集まっていました
わたしと娘は大山祇神社の薪能には2回ほど行ったことがあるのですが、そこは神社という場所がらすばらしい雰囲気を持っており、いつも満足して帰っていました。
来年は大山祇神社に行こうね。
帰りの車の中でリベンジ(?)を誓ったのでした。
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