五木寛之さんが出演していたTV番組で視聴者の質問で青春の門の完結編を書かれないんですかというのがあり、残された2部を今年書く予定だという。若かりし頃週刊現代で連載されていたことをうっすら覚えている。市の図書館でまずは1部の筑豊編上下を借りてきて読んだ
私が大学を卒業して働き始めた24歳の頃、1969年に週刊現代で連載が始まったようだ。そして1976年に第一部の筑豊編上下が吉川英治文学賞を受賞している。九州の田川、筑豊という石炭産業華やかなりし頃の男の子が大学に入るまでの激動の時代の中で迷い成長してゆくさまをダイナミックに描かれている。
炭鉱の工夫の親方で昇り竜の重蔵と畏怖された父親とタエという魅力的な義母の下でこの物語の主人公伊吹信介がふっきれた男の中の男といわれた父親のようになりたいと思うがそうはいかない現実のはざまで迷い苦しみ成長してゆく。資本家と労働者、韓国人と日本人、任侠の世界、性へのめざめ。私の幼少期から少年期、青年期への時代とダブル。
鉱山の事故で朝鮮人30人が生き埋めになる。重蔵は水を排水するために新穴をダイナマイトで爆破して助けようとする。生きるも死ぬも命は一つ、対立していた資本側の用心棒、塙組の塙竜五郎にタエと信介を頼むと言い残して自爆する。敗戦後、母子のみの苦しい生活が始まる。長屋の住人の娘の牧織江が年下の幼友達。鉱山事故で助けてもらった在日朝鮮人の金朱列との交流が始まる。大陸にのがれていた塙竜五郎がハーレーにのってタエのところにやってきて二人の面倒をみたいという。金主列と塙竜太郎の対立が始まる。その間織江と信介は二人だけの秘密の時間をもつ。やがて信介は中学に進学する。タエが肺病になる。龍五郎が飯塚に二人を呼びたいとさそう。バイクにも乗せるし高校にもいかせるという。タエさえ良ければ飯塚にいくと信介はこたえ、飯塚の塙組に住まいを移す。
タエの病状が悪化入院。信介は表向きは運送業だが塙組というやくざの世界で生活を始める。組員の若い衆にマスターベイションをおそわりのめりこみ罪悪感にさいなまれる。中学の野球部の早武先生に相談、男ならだれでもすること、やりすぎて死にはせんと教えられ安心する。高校に東京からきた音楽の梓旗江先生と出会う。たまたまバイクで博多駅まで送り仲良くなる。しかし男の教師との密通現場をみて幻滅、やがて梓先生は東京にかえる。そんな時組長の竜五郎が足を散弾でうたれる。小倉のやくざとの抗争で信介は任侠の世界のすさまじさを体験する。
早稲田大学から合格通知が届いたとき、義母のタエは息を引き取る。信介も義足をつけた龍五郎も絶望する。信介は母もいない今、龍五郎の世話になるわけにはいかないという。しかし留五郎は父、重蔵との約束だし、信介が好きだから面倒をみさせてくれと説得。そして信介は東京への夜行列車にのりこむ。思いで深い筑豊の町々が遠い世界となって消えてゆく。
今、第二部の自立編を読んでいる。さすがに五木寛之さんの筆力にぐいぐい引き込まれてゆく。