建物が気に入って写真を撮って帰りましたが、その位置(大阪市中央区今橋3-2-2)から名前を調べると、「グランサンクタス淀屋橋」。って?何かと思ったら、以前には(1968年から)「八木通商」という繊維商社の本社屋だったのです。
元々は大阪農工銀行の建物。1917(大正6)年、 辰野金吾の大阪事務所が設計を担当し、赤レンガのデザインでしたが、前面道路の拡幅に伴い、1929(昭和4)年に國枝博という建築家の改修によって、道路側の壁面はアラベスク文様や唐草文様のイスラム様式のテラコッタタイルで覆われ、辰野の作風とはまったく異なる建築に変わりました。
八木通商の建物を2010年頃に不動産会社が取得してマンションに建て替えるにあたり、コストはかかるものの外壁保存によっ て行うことに。大阪市船場地区の建築制限上、外壁の位置を現状より奥に後退しなければならないという問題が立ち塞がりました。そこで内側と3階部分を解体した後、L字型に残った全長30m、重さ600トンの外壁を水平移動させる曳家工法という難工事を実施。その完了後、内側に地上13階、地下1階建てのマンションを建設し、2013(平成25)年に完成しました。
新旧のデザインがあまり違和感なく見えるのは、色が統一されていること、開口部を縦長に統一したことによります。
大がかりな工事を行って、テラコッタタイルの外壁がそのまま残されて、とにかくよかったです。