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「おん忌みを過ごしてゆっくり思えども辛抱しきれず里にうかがう()」
「九月の十日ばかり行く里は野山に秋の色が濃くなる()」
「木枯らしに山田の鳴子が音たてど黄金の鹿も驚かずいる()」
「竜胆がひとつ気長に這い出して露を帯びるはものかなしけり()」
「大将の衣装としぐさに女房等感心をして眺めていたり()」
「少将の君を名指して呼び出せり縁側にくる少しはなれて()」
「少将は大和守の妹で御息所のそばで育てり()」
「少将につのる思いを告げられてもうこれ以上堪えるはできずと()」
「少将も泣き入りながらあの晩の返り事待つ様子を語る()」
「これからは誰を頼りに生きるかと因縁語り説得してと()」
「秋なれば山とよむまでなく鹿にわれ劣らめや独りぬる夜は(古今集)」
「里遠み小野の篠原わけて来てわれもしかこそ声も惜しまれ(#38)」
「ふぢごろも露けき秋の山人は鹿のなく音にねをぞ添えつる()」