6/16
「かの姫は塗籠の中こもりたり色々いえど今夜も逢わず()」
「一周忌の間は供養をつとめたい固い決心あいたくないと()」
「嫌いとて伺わなければ捨てられたように見えては名誉に関わると()」
「少将を責めれば塗籠の北の口からお入れもうせり()」
「召し使うものまで皆が裏切れる当てにならぬは人の心と()」
「もう頼る人もなくなる身を愁えかえすがえすも悲しくなれり()」
「男君理説いて訴える泣きや笑いを交えて話す()」
「あきらめて私を川と思いなし身を投げるよに考えてほしと()」
「こんな風に間抜けた格好なさけない今日はとどまりゆっくりとする()」
「このように一本気にはあきれたり恨む一方哀れも感ず()」
「塗籠の中は狭くて調度など片寄せたまい座っていたり()」
「薄暗いところに朝日差し込んで御衣引きのけ拝顔をする()」
「御宮は女らしくて上品であでやかなりしお姿であり()」
「柏木は格別美男でなけれども思い上がって自信家だった()」
「いろいろと思案廻らしご自分を納得させんとお努めになる()」
「お手水やお粥は居間で召し上がる大和守が喪の色避ける()」
「何となく締まりない癖つきたるを大和守は上手くさせたり()」