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「雲間から十日あまりの月が出て大将殿は院を尋ねる()」
「橘が月の光に鮮やかに影映されて匂ってきたり()」
「色かへぬ花橘にほととぎす千代を馴らせる声きこゆなり(後撰集)」
「村雲が急に出てきて恐ろしげ雨降り出して空暗くなる()」
「ひとりして聞くは悲しきほととぎす妹が垣根におとなはせばや(河海抄所引)」
「独り住み妙に寂しいものだねと今から馴れれば心は澄めん()」
「大空は恋しき人のかたみかは物思ふごとに眺めらるらん(古今集)」
「余所目にも傷ましく見え亡き人を思い焦がれば出家もできず()」
「昨日今日思いしうちに一周忌近づき問えるいかにするかと()」
「古のこと語らへば時鳥いかに知りてかふるごえのする(古今六帖)」
「亡き人をしのぶる宵の村雨にぬれてや来つる山ほととぎす(#74)」
「時鳥きみにつてなん故郷の花たちばなは今ぞさかりと(#75)」
「悲しさぞまさりにまさる人の身にいかに多かる涙なるらん(古今六帖)」
「つれづれとわがなきくらす夏の日をかごとがましき虫のこえかな(#76)」
「夜を知る蛍を見ても悲しきは時ぞともなき思ひなりけり(#77)」