このところ,出演作の数だけは多いものの,「アイリッシュマン」等いくつかの作品を除いて脇役での出演がほとんどだったロバート・デ・ニーロが一枚看板で出ると聞いただけで心は弾む。加えてロッテントマトで85%がフレッシュという評価。しかもクレジットにはあの「ディア・ハンター」以来の共演となるクリストファー・ウォーケンの名前もある。近頃のハリウッド製のコメディは,劇場スルーで配信やパッケージに直行するケースが多かっただけに,COVID-19禍による新作供給本数の減少が吉と出た結果の劇場公開だったのだが…。
妻を亡くして独居老人となったエド(ロバート・デ・ニーロ)は,娘(ユマ・サーマン)の誘いに応じて娘の家族との同居に踏み切る。ところがエドが住むことになった部屋は,昨日まで孫のピーターが使っていた部屋だった。屋根裏部屋に押し込められたピーターは自分の部屋を取り戻すべく,エドに対して宣戦布告を突きつける。かくしてエドは旧友のジェリー(クリストファー・ウォーケン)を巻き込み,孫との嫌がらせ合戦に余生をかけて挑んでいくのだった。
いくら原作が「人気の児童文学」とは言え,こうしてあらすじを追っていくだけでは,救いようもないくらい幼稚な物語だ。当然,その映画化にあたっては大スクリーンに相応しいビジュアルに訴えるエピソードの追加や,大人の鑑賞に堪えうる描写が必要だったはずだが,制作陣は今となっては出演料のダウンに伴って必然的にコスパが上がった70年代の大スターたちを,ただ集めてくるしか能がなかったかのようだ。一応時流に沿ったアイテムとしてドローンを登場させはするが,笑いにも映像的なカタルシスにも帰結しない稚拙な使い方は,子供たちにも呆れられるだろう。身体が動かなくなったロートルにドタバタをやらせるならば,それ相応の工夫が必要なはずなのに,こともあろうにデ・ニーロとウォーケンというビッグネームに,まともにドッジボールをやらせるに至っては,「児童」ならぬ「高齢者」虐待で訴えられてもおかしくないような悲惨さ。笑えないを通り越して,可哀相で涙が出てくる。
歴史に残る名優には,主役で出られるのならば何でもよい,というやさぐれた態度を改め,せめて「マイ・インターン」級の艶っぽい「終活」を切に望む。
★
(★★★★★が最高)
妻を亡くして独居老人となったエド(ロバート・デ・ニーロ)は,娘(ユマ・サーマン)の誘いに応じて娘の家族との同居に踏み切る。ところがエドが住むことになった部屋は,昨日まで孫のピーターが使っていた部屋だった。屋根裏部屋に押し込められたピーターは自分の部屋を取り戻すべく,エドに対して宣戦布告を突きつける。かくしてエドは旧友のジェリー(クリストファー・ウォーケン)を巻き込み,孫との嫌がらせ合戦に余生をかけて挑んでいくのだった。
いくら原作が「人気の児童文学」とは言え,こうしてあらすじを追っていくだけでは,救いようもないくらい幼稚な物語だ。当然,その映画化にあたっては大スクリーンに相応しいビジュアルに訴えるエピソードの追加や,大人の鑑賞に堪えうる描写が必要だったはずだが,制作陣は今となっては出演料のダウンに伴って必然的にコスパが上がった70年代の大スターたちを,ただ集めてくるしか能がなかったかのようだ。一応時流に沿ったアイテムとしてドローンを登場させはするが,笑いにも映像的なカタルシスにも帰結しない稚拙な使い方は,子供たちにも呆れられるだろう。身体が動かなくなったロートルにドタバタをやらせるならば,それ相応の工夫が必要なはずなのに,こともあろうにデ・ニーロとウォーケンというビッグネームに,まともにドッジボールをやらせるに至っては,「児童」ならぬ「高齢者」虐待で訴えられてもおかしくないような悲惨さ。笑えないを通り越して,可哀相で涙が出てくる。
歴史に残る名優には,主役で出られるのならば何でもよい,というやさぐれた態度を改め,せめて「マイ・インターン」級の艶っぽい「終活」を切に望む。
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(★★★★★が最高)