Music Mania

No Music No Life

ピンク・フロイド「タイム」

2014年01月04日 | 音楽
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくおねがいします。

さて、今年から始まる新シリーズ、それは「ギター名曲シリーズ」だ。
これはギターという楽器が大きな役割を果たしているロックやポップスを紹介しようという試みで、名ギターリフ、名ギターソロ、名アレンジの名曲を上げてみたい。
以前書いた名盤シリーズのような1アーティスト1曲ではなく、何度も同じギタリストやバンドが出てくるのもOKとする。
また、ソロ歌手のバックで弾いている無名のギタリストも登場するかもしれない。

まず第1段はピンク・フロイド「タイム」だ。

アーティスト:ピンク・フロイド
ギタリスト:デイヴ・ギルモア
アルバム:狂気
発表:1973年



ピンク・フロイドが1973年に発表した「狂気」はプログレッシブ・ロックの名盤とされ、記録的な売り上げを誇る。
アルバム全体が一つの組曲のような構成になっており、今回紹介する「タイム」はその前半に位置する。

この曲は、歌そのもののメロディはいたって単純だと思う。
そのシンプルさを補っているのが、非常にすぐれたアレンジと深い歌詞だ。
まず歌詞を読んでいただこう。


倦怠にまみれた一日を刻む時計の音
お前はただ無駄に時間を浪費していく
小さな部屋を怠惰に寝そべったままで
「導いてくれる何か」をひたすら待っている
妄想と自慰に飽きて
尚も家の中から外の雨を眺め続ける日々
若いお前にとって人生は長い
一日を無駄にしても時間は有り余る

ある日、10年が過ぎ去っている事に気付く
いつ走り出せばいいのかなんて
誰も教えてはくれなかった
お前はスタートの合図を聞き逃していたのだ

太陽に追いつこうとひたすら走る
地平線の向こうへ沈んだかと思った太陽は
お前の背後から再び姿を現わす
相対的に太陽の位置は一切変わっていない
お前だけが年老いていく
やがて息は切れ 刻々と死に近づいていく
「もっと言いたい事があったはずなのに・・・」

毎年毎年、一年が短くなる
契機など一向に見つかりそうにない
お前の人生計画はすべて失敗に終わり
予定表はページ半分になぐり書かれた線と化す
お前は英国紳士らしく静かな絶望に身を任せるだろう
こうして時間は過ぎ、この曲も終わりを迎える
「もっと言いたい事があったはずなのに・・・」



僕ははじめてこの歌詞を読んだとき、まるで自分のことを言われているようで怖くなったものだ。
歌のバックを支えるバンド・アンサンブルは、決してボーカルメロディを邪魔をせず、シンプル且つ抜群のセンスでネガティブな歌詞を支えている。
そして3分15秒あたりから始まる、1分30秒に及ぶギターソロ、これが実に顕著に歌詞世界を表現していると思う。
気だるさと、時間からの取り残され感、何かをやらねばならないが何をすべきかわからない絶望感、これらが決してテクニックに頼ることなく、うねるようにギターが叫ぶのだ。
ギターの音色もいい。
空間の中に響き渡るような広がりをもって、「オマエは時間をムダにしてはいないのか?」と訴えかけてくる。

プログレ系のギタリストといえば、ロバート・フリップやスティーブ・ハウのような、ジャズやクラシックの影響が強いイメージがあるが、デイヴ・ギルモアには当てはまらない。
ブルースをベースにした、極めてロック・ギタリストらしいフレーズを弾く人だと思う。

Pink Floyd/Time



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