愛知県・幡豆郡吉良町の吉良温泉にある「三河湾リゾートリンクス」に泊まる事にした。
三河湾沿いは蒲郡以外は初めての地なので、途中の西尾城趾公園に立ち寄り(西尾産の抹茶を呑む)、
吉良町立図書館では小笠原流礼法の文献を複写(幡豆は小笠原分家の地)。
これらに立ち寄ったことで、宿の到着がちょうど午後3時のチェックイン時になった。
ただ、ホテル正面の駐車場は会員専用なので一般客の私は使用不可。
すこし下の立体タワー駐車場には、わが愛車のルーフキャリアがひっかかって不可。
なので、ずっと下の立体駐車場を案内された。
ここで私の運気が急降下したことになる。
鉄骨組の立体駐車場に車を置き、車の横で荷物もろとも立ち上がった時、
頭を思いっきり斜めの鉄骨にぶつけた。

ハンチングを被っていて、視界の上方が妨げられていたためでもある。
痛みで頭がクラクラしながらも、そのまま車のトランクを開けて手荷物を取ろうとすると、
手荷物にポタポタと鮮血がしたたり落ちてくる。
「やばい」と思い、被っていたハンチングを取ると、内側に血がべっとり。
掛けている眼鏡のレンズにも血がしたたり落ちて、眼鏡をはずす。
髪に手をやると、手にもべっとり血がついてくる。
血は私の顔を通り越して地面にまでしたたり落ちる。

顔中血だらけになりながら、駐車場の案内係の人に向かって声をかけるも、
私の姿が逆光になっているためか、平然と道案内をしてくる。
彼の目の前まで接近すると、さすがに私の異常な姿に気づき、
無線電話で人を呼んでくれた。
その間、トランクからタオルを出して、駐車場の隅で腰をおろし、タオルで血を拭いた。
白いタオルはたちまち紅白のまだら模様になったが、出血は止まらない。
近くでは女の子のグループが話し込んでいるが、
彼女たちには見つからないよう、車の陰に腰掛けた。
暴漢に襲われたり、交通事故にあったなら、彼女たちに救いを求めるが、
自分で頭をぶつけたというのでは、同情されるどころか物笑いの種になる。
やがてホテルのフロント担当らしききちっとした風体の人が救急箱持参でやってきた。
傷口を消毒し、包帯を巻いてくれた。
時間がたったことにより出血も止まったようだ。
でも頭の内外はガンガンと痛い。
彼は「応急処置だけなので医者に行った方がいい」というが、
私はとりあえずはチェックインをしたい。
ホテルの入口の水道でタオルに水をひたして血塗られた顔をぬぐってから、
フロントに行く。
フロントでチェックインをし、別の担当者から説明を受けるが、
頭痛のため頭に入りにくい。
とりあえず部屋で様子をみて、おかしくなったらフロントに連絡することにして
(救急車も手配してくれるとのこと)、
保険証持ってこなかったことを悔やみつつ、部屋に入って着替えた。
いつもなら、まずは大浴場に飛び込むのだが、
今は頭部に血流を増やさない方がいい。
だいいち頭内外の痛みもひかない。
なので、部屋で持ち込んだ仕事=論文1の校正ゲラをチェックする。
午後5時半をすぎ、夕食前の入浴予定時間。
痛みもだいぶ引いたが、念のためシャワーキャップをつけて入浴。
でも包帯が取れてしまったので、そのまま頭にシャワーをかけて、血の痕を落とす。
洗面器内はみるみる薄赤色になる。
湯舟につかりながら、今日の出来事を振り返った。
頭部からあれだけの出血をみたのは自分でも初めてで、我ながらびっくりした。
でも、鉄柱に頭を打ち付けて出血することなど、
プロレスラーだったら毎度の事。
流血のデスマッチを終えれば、彼らも入浴してさっぱりするだろう。
今の自分もそんなところだ。
ただ界面活性剤(シャンプー)はまだ頭皮につけない方がいいだろう。
バスタオルで慎重に髪の水分を取る。
まだタオルがうすく赤くなる。
それでも夕食をとる頃には、痛みもすっかり取れた。
今思えば、派手に出血したことで、内出血にならずにすみ、
その分痛みが尾を引くこともないだろう。
でも解せないのは、四角い鉄骨の面側に頭が当たったのに、
なぜ皮膚が切れたのか。
翌日、現場検証にあたった。
血痕も生々しい現場に行き、当の鉄骨をよくみると、
鉄骨の面の間に、鉄の板が挟みこまれ、
その板の厚みの部分が鉄骨の面からはみ出ている。
厚みの両端が角のでっぱりとなる。
頭をぶつけた鉄骨の真中が、運悪く90°の角となっていたのだ(写真)。

豆腐の角ならぬ、鉄板の角に頭を打ち突けたことになる。
これなら切れるわけだ。
2日目の晩、レストランのレジ係の人が、私が頭をぶつけて出血したことを知っていた。
フロントから連絡があったのだろう。
私が紹興酒を飲みながら中華バイキングを何皿も食べたのを知っている彼は、
「異状なし」と報告したはず。