私はGWには旅に出ない代わりに、それが明けた週末に行く事にしている。
宿も取りやすく、交通の混雑もないから。
まぁ、それが可能なワークスタイルなわけだが。
さて、今回の旅先は、年に2回は行く地元愛知の茶臼山高原。
その目的は2つあり、しかもそれらは順に遂行される。
1つ目の目的は「矢作(やはぎ)川を遡る」こと。
矢作川の源頭(水源の山)が愛知の最高峰にしてわが目的地である茶臼山なのだ。
私は”川に沿って遡る”ことを徒歩と車の旅の共通のテーマにしている。
ただ河口から水源までの完全遡行の旅となると、これができる川は意外に少ない。
なぜなら、川の源流部はたいてい人が容易には入れない山の中だから。
だから逆に、これができる川は貴重だ(たとえば木曽三川の1つ「長良川」は達成済み)。
今回の「矢作川」は西三河(豊田、岡崎、西尾など)の母なる川。
昔、西三河の学生たちを車で送った時、矢作川に達したら、車窓を明けて匂いをかいで、「地元に戻ってきた」と喜んでいた。
三河の人は同県内の尾張(名古屋)に通勤・通学すると、他国に行っているような緊張感を覚えるらしい。
実際、西三河の人にとって母なる矢作川への思いは強く、書籍は多数あり、豊田市には専門の研究所もある。
さて実施上の問題は、河口から水源まで川沿いをほぼ通して車で行けるかだ(以後、これを「遡上ドライブ」と称す)。
道路地図で確認すると、なぜか右岸(上流から見て右側)に沿って、神社が点在しており、道も続いているのでなんとか行けそう。
というわけで、まずは出発点となる河口部の右岸(碧南市)に向かった。
ところが、その手前に「中部電力碧南火力発電所」があり、そこから先は道はあるものの進入禁止(地図だけでの確認の限界)。
火力発電所の隣に「たんトピア」という公園や見学施設があるので、入ってみたが高いところがなく、河口部は見えない。
しかたなく、発電所から少し上流側の堤防に行くことにした。
行く手の堤防の下に車がたくさん止っている。
その並びに車を停めて、堤防上に登ると、河口が見わたせる。
車で来た人たちは潮干狩りに来ているのだ。
堤防から眺める矢作川の河口部は、川とも海ともつかぬゆったりとした入り江になっており、海側はもともと静かな三河湾ということもあり、川の瀬音も海の潮騒もなく、流れも波もない、静かな水面が拡がっている(写真)。
水辺には、牡蛎のような貝が岩にひしめいている。
なるほど、これなら潮干狩りをやりたくなる。
西三河の平野を潤してきた矢作川は、最後の河口においても、その地独特の恵みを与えているわけだ。
河口一帯を見わたして車に乗り込む。
さあ、ここから遡上ドライブの始まり。
コンクリの堤防の直下の道はやがて堤防の上になる。
河口から5km地点までは、同じような河口状態で、潮干狩りの姿が点々と見える。
堤防上を気分よく快走していたため、最初の立寄り先である「川口神社」を素通りしてしまった。
矢作川を渡る大きな橋を横切り、碧南市の「水源公園」に立寄る。
ここには人工の岩山から水が出て、人工の小川が園内を蛇行して、池に注いでいる。
すなわち矢作川のミニチュアが作られている。
とすると水が湧き出ている岩山は茶臼山を表現しているのか。
ふたたび堤防、ただしコンクリの堤防ではなく、矢作川が作った自然堤防の上を快走する(信号が全然なく、交通量も少ない)。
このあたりから、矢作川は、中流部でよくみる、広い川原に木々が点在する矢作川の独特の風景が続く(写真:左が私の車)。
川岸もコンクリで覆われず、自然のままになっているのがいい。
対岸にある西尾の市街地を横目で過ぎ、安城市に入って、道路脇の「天神社」に立寄る。
ここには三河地震の死者を祀る碑と大きな卵状の力石があった(持上げて力を競う)。
岡崎市に入り、日吉丸(後の秀吉)が出世のきっかけを得た伝説のある矢作橋をくぐると、地名もずばり「矢作町」になる。
そして川沿い第一の立ち寄り先「矢作神社」に達する。
ヤマト・タケルが東征の折り、この地で抵抗にあったが、川沿いの竹を矢にして退治したという。
それが「矢作川」の名の由来なのだ。
それにちなんで境内には矢立の竹が植わっている。
この神社は、後にも八幡太郎義家、新田義貞も戦勝祈願をして、実際に勝利を得た。
さて、ここから先は川沿いの道が対岸に移ったり、道を替えないと川から離れていったりするので、ルートの選定は結構たいへん。
たとえば、県道26号の日名橋で初めて左岸に渡る(右岸は道が川から遠のくため)。
ただこちらも川からは幾分離れざるをえず、国道248(246の続き?)を北上し、支流の青木川の橋を渡り、天神橋でまた右岸に渡り返して、広大な豊田市に入る(ここから、明日県境を越えるまでほとんどずっと豊田市)。
さらに、右岸の自然堤防の道に出るのにかなり迂回して、東名高速の下をくぐって、伊勢湾岸自動車道の下あたりでさっきの国道248を今度は南下して葵大橋で左岸に渡る(再び一旦岡崎市)。
できるだけ川沿いの狭い道(すれ違いも難しい農道)を通って、支流の巴川の橋を越えると、やっと今日の宿「フォレスタヒルズ」(豊田市)に達する。
時刻はまだ13時半だが、宿はここにしたいので、今日はこれで終り。
フォレスタヒルズは、その名のとおり丘の上にあるトヨタ自動車系列のリゾートホテルで、厚生施設用らしく、部外者であっても料金が低めに設定されている。
さすがトヨタだけあって料金の割りには、結婚式場もあるちゃんとしたホテルなので、私のようなラフなアウトドアのいで立ちで行くと違和感丸出しになる。
大浴場は温泉ではないが、24時までずっと入れる。
ここの敷地(けっこう広い)しかない山の中なので、風景的に転地効果がある。
ツインの室内は洒落ていて広めで、ビジネスプランの軽い2食付きなら、ビジホのシングルよりは、気分転換(リフレッシュ)に使えそう。
考えてみたら、豊田って名古屋から近過ぎてまともに訪れていない(奥三河への旅で通過するばかり)。
トヨタ自動車が本拠地とする以前(本来は「挙母」(ころも)という地名)から、矢作川沿いに古墳も多く、ちょっと奥には松平氏の郷もある。