山に行くと左脚の腸脛靱帯炎が発症し(別名「ランナー膝」、具体的には膝関節のすぐ上の外側が歩行時に痛む)、歩行困難になってしまう。
”山好き”にとっては致命的な問題なのでなんとかしたい。
昨年末に行った高尾山(599m:都内の小学生が最初に登る山)ですら発症してしまったので、行ける山がなくなった。
といっても日ごろ(平地)はまったく症状がでないので、山の現場で対処するしかない。
高尾山は山が浅くて安全度が高く、気楽に行けるので、むしろここを試行錯誤の場にしよう。
ということで、本日、再び高尾山に向った。
登りは前回と同じ直登ルートを取るも、歩く時間を長くするため3号路(南側の巻き道で高尾山で最も静かな道)を経由した。
やはり登りの段階で左膝に違和感を覚える(ただし痛みではない)。
山頂は前回よりは混んでいて、昼時ということもあり、座る場所すらない。
晴天なのだが遠望が利かず、富士は見えない。
山頂の茶屋で名物のトロロ蕎麦をとも思ったが、空腹でないので下山後でいいやと思い直し(つまり昼食の用意なし。これが許されるのは高尾山のみ)、
靴ひもを結びなおして、下山路は前回同様、高尾山では最長の「稲荷山コース」を選ぶ。
降り始めで、もう左脚は違和感から痛みに変わりそう。
腸脛靱帯炎は、下りの長さ(負荷の蓄積)によって痛み出すのだと思っていたが、実はそうではなく、
下りとなると、いつ痛みだしてもおかしくないのだ。
それがある時、なんらかの動作(負荷)で痛みが顕在化し、それ以降は痛みつづけて歩行が困難になるのだ。
ということは痛みを顕在化させないで潜在させたままにする事が重要。
それには、膝から上の腸脛靱帯に直接負荷を与えないことである。
これは当然で、問題はその方策(歩き方)。
今まで、2つの仮説を考えた。
①足底部の外側(ガイソク)ではなく、内側に加重することで、外側部にある腸脛靱帯に負荷をあたえない。
②下りの着地を爪先着地にし、また歩幅を小さくすることで、着地時の下から膝への衝撃を和らげる。
そして、それぞれ仮説にもとづく歩行法を実施してみたが、結果はいずれも痛みを潜在化させておくことには失敗。
なので今回は別の仮説が必要。
頭での理屈ではなく、現場での体感をもとに考えたい。
下山しながら思いついたことは、腸脛靱帯と平行している大腿四頭筋が負荷を担当すればいいのではないか、ということ。
そもそも登りでまったく痛まないのは、登りは大腿四頭筋が体を持ち上げる負荷を担当するからで、
下りで痛むのは、左脚が後ろ足になって大腿四頭筋が伸びきって力を出さない瞬間だ。
なので、大腿四頭筋を常に負荷状態にするため、あえて腰を落とし、膝を常に屈曲して歩けばいいのではないか。
これはすなわち和式歩行である(ただし”すり足”をしない点は異なる)。
和式歩行だと着地も爪先や踵ではなく、足裏全体でのフラット着地となる。
なかなかいい。
両膝を曲げていても街中でないので見た目に違和感なく、スタスタ歩ける。
①の足底部の重心移動や②の着地法などは効果がなく、大腿四頭筋がポイントだとわかった。
ただ時たまどうしても、左脚が後ろ足になって右足が着地する直前(左膝に負荷がかかる瞬間)に痛みが走る。
そこで、左脚が後ろ足にならないよう、送り足(左足だけ前足になり、両足を交互にしない)にすると痛みがでない
(といっても完全な送り足では歩きにくいので左右の歩幅を変えるくらい)。
つまり、膝を曲げた姿勢で、痛む側の左足をむしろ積極的に前に出して歩くと痛みがこないことがわかった。
以前は痛む左脚を守るつもりで、右足を前に出して降りたため、かえって痛みが増したのだ
(文中「脚」と「足」を微妙に使い分けているが、気にしなくて結構)。
後ろ足の踵を上げずに後方に蹴り出さないように歩くのだから、すり足部分を除いた完全な和式歩行(山伏などの一本歯の下駄での歩行)だ。
この歩行を保って下りつづけたら、なんとか無事に下山できた。
試行錯誤したこともあって多少の痛みはあるものの、今回は敗北感ではなく、明るい見通しの手応えを得た。
これは祝杯ものだと思い、蕎麦屋を素通りして、コンビニに向い、ビールとつまみをかって、「599ミュージアム」内で一人で乾杯した。
駅の階段を降りる時もまったく痛みはない。
登山の最低ラインといえる高尾山はなんとかクリアした(いいかえると高尾山までレベルを下げた)。
次は標高を上げてみる。