演題は、本来なら、現在の「被服心理学」そのものが家政学者にとって抱かれている問題(底の浅さ)を話題にすべきだったが、被服学について無知なのでそれはやめて、
作法と関連づけて「その服装でどう振る舞うか」というタイトルで、服装が作法に与える影響を映像・実演を加えて論じた(実演用に軽衫(かるさん)という和服を着て)。
60分間なので、通りいっぺんの話を急いだだけで終わってしまったが、日本人として知ってほしい正しい和式所作について少しは紹介できたと思う。
そして講演が終わって帰宅中、実は私の作法学は、R.バルトの『モードの体系』の方法をヒントにしたことを思いだした。
つまりファッション記事の記号論的分析方法が作法の構造的分析に応用できると思ったのだ。
もちろん機械的応用ではなく、独自な概念化が必要だが。
社会心理学をただ右から左に適用しただけの、すなわち独自な分析概念のない現状の被服心理(独立した学とは言いづらい)よりも、「装いの意味」を構造的に記述できるこの方法の方が、服と人間との関係を理論化できる可能性があるような気がする。
ちなみにモードの体系の作法への実際の応用は電車内姿勢の美的評価の分析として、拙著『作法学の誕生』(春風社)に載せてある。
…宣伝しちゃった