気象予報士程度に気象学の勉強をしている者なら、現在の地球温暖化傾向に関して、CO2(二酸化炭素)の増加がその原因というのは、”仮説(学説)の1つ”でしかないことは知っているはず。
いちばん有力な反論は、CO2増加は温暖化の原因ではなく、結果だという説。
そして温暖化の真の原因は、もともと微量なCO2のさらに微量な増加などではなく、もっと絶大な力によるもの。
たとえば縄文海進の頃は今よりもっと温暖だった。
そしてその絶大な力は、温暖化よりもっとずっと深刻な”氷河期”をもたらす(日本アルプスが再び氷河に覆われる姿は見てみたいけど)。
地球は、もとより複数のスケールの周期で寒冷化と温暖化を繰り返しており、そのいずれでもない”定常状態”が正常(デフォルト)であると思う方が間違っている。
このへんの議論は以下の書などが参考になる。
丸山茂徳著 『「地球温暖化論」に騙されるな!』2008年 講談社
とにかくCO2温暖化説が政治的に定説化され、特定のCO2削減量が既定の行動目標となってしまった。
その値はEUに都合のよい設定だったので、米は批准せず、カナダが離脱、中国・インドなどは不参加となった。
開催国でもあった日本は同調せざるをえず自縄自縛状態を招いた。
以来、猫も杓子もエコエコ言い出し、「不都合な真実」というある政治家が作ったプロパガンダ映画が各地で上映され(わが勤務先でも)、
調子に乗ったニュースキャスターが、気象のちょっとした異常(平年値から外れる統計的にありうる現象)をなんでも地球温暖化に結びつける発想をばらまく(そういう態度を”地温症”というらしい)。
わが”ひぐらし気象台”の統計によっても、昨年は確かに年間通して高温傾向で、そのため地温症的発言がかまびすしかったが(その原因は太平洋のラニーニャ現象)、一昨(2006)年の豪雪の時は、それが温暖化と結びつけられることはなかった(温暖化が深層海流を変化させて寒冷化をもたらすという気象学的論理は存在する。それを映画化したのが「デイ・アフター・トゥモロー」)。
実は、今年は今のところ昨年に較べて低温傾向なのだが(ただしランダムな変動の範囲内)、そのことは誰も指摘しない(丸山氏の考えでは2007年に温暖化のピークは過ぎているという。
ただ今年の7月に限っては梅雨明けが早いので暑くなりそう)。
今年7月5日の河北新報(ネット配信)によれば、近藤純正・東北大名誉教授(気象学)は過去の日本の観測データの再調査によって、過去100年間に上昇した年平均気温は0.67度であり、気象庁発表の1.1度より小さいと発表した
(気象庁の分析は、ヒートアイランドなど観測地のローカルな影響が混合されていたという)。
と、冷静な学者は、政治スローガン化された温暖化論からは距離をおいてるが、
今CO2犯人説に公然と反対すれば、アメリカ産業界や経団連の御用学者と目されてしまうだろうな(なら賛成者は環境ビジネス側?)。
私自身、CO2犯人説は取らなくとも、資源・エネルギー問題から省エネ対策は必須と思っているので、方向性そのものには異議はなかった(たとえばクールビズは大賛成。なぜって暑い夏での上着にネクタイ姿は、被服科学的にナンセンスだから)。
だが、省エネの効果を”CO2排出量”のみに単純化して評価すると、排出権売買のような姑息な手段などに兆の単位を超える資金が使われることとなり、そういう変な方向に対しては黙っていられなくなる。
地球規模での重大問題は、CO2濃度の増加ではなく、資源・エネルギー、それに人口問題(≠国内の少子化問題)のはずだ。
くれぐれも問題の本質を見失わないでほしい。