今年の2月以来の鎌倉を訪れた。→前回の鎌倉
今回の主目的は、毎月28日だけに開帳される明王院の五大明王の拝観。
28日が東京にいる日と重なるのはそう多くないので、この機を逃したくない。
ちなみに明王院は、十二所(じゅうにそ)という鎌倉東端の地にある(切り通しを越えると横浜市)。
高校時代に鎌倉を好きになってその時に市内の寺を巡り尽くしたが、こういう外れにある寺はその時以来(半世紀ぶり)の再訪となる。
そして鶴岡八幡宮より東の”東鎌倉”(私が勝手に命名)に行くとなれば、覚園寺(かくおんじ)を外すわけにはいかない。
覚園寺は、寺の密度の高い鎌倉の中では珍しくポツンと離れた所にあるが、薬師三尊のとりわけ日光菩薩が美仏好きの私のお気に入りで(鎌倉の仏ではトップ)、機会があれば必ず訪れてお顔を拝みたい。
鎌倉の寺々は観光寺院に堕すことなく、宗教空間としての尊厳を維持するよう努めている。
前回訪れた時の覚園寺は1時間毎にグループになって解説者付きで拝観した。
なのでタイミングが悪いと50分以上待つことになる。
一方、明王院は13時に法要があり、それに合わせて拝観ができるようだ。
ということで、ポツンと離れた覚園寺と13時の明王院のどちらを先にするか迷ったが、覚園寺を先にして12時に拝観し、そこから山道を抜けて13時に明王院に降りるという計画にした。
横須賀線の鎌倉駅に10時半に降り立ち、早速観光案内所で、覚園寺の拝観時間について尋ねると、今では1時間毎ではなく、自由に拝観できるという。
それなら時間調整は不要で、駅のコンビニでおにぎりを買って、覚園寺最寄りの大塔宮までバスに乗り、バス乗り場のベンチでおにぎりを食べて、お宮境内のトイレを借りて、覚園寺への一本道を進む。
途中に本格的な蕎麦を出す店などがあるが、寺巡りに値が張ったランチを食べる気はしない。
覚園寺の入り口に達し(写真)、まずは愛染堂で愛染明王を参拝し、拝観料500円払って、自然豊かな境内に入る(ここから先は撮影禁止)。
「順路」があったがそれに気づかず、茅葺の薬師堂(順路では最後)に直進し、丈六の薬師三尊を見上げる。
以前よりは明るい堂内なので、じっくり拝観できる。
薬師如来の両脇侍の日光・月光菩薩は、本尊を挟んで対照的な姿勢以外の形態は同じはずだが、奈良の薬師寺の両菩薩がそうであるように、ここの両菩薩も微妙にお顔が異なる。
向かって左の月光菩薩は、残念なことにお顔に丸い染みのようなものが幾つもできているのが美観を損ね、また目の造りも生気に乏しい。
それに対して、向かって右の日光菩薩は、綺麗なお顔に切長の半眼ながら目がぱっちりしていて目力がある。
その目にしっかり見つめられると、「日光菩薩様にずっと見られていたい」という気持ちになってしまって、立ち去る踏ん切りがつかめない。
13時の明王院の法要に間に合わねばならないので、12時を区切りに去ることにした(受付で三尊の御影を買う)。
大塔宮まで戻り、東進して、発掘が進んで公園になっている永福寺跡を素通りし、瑞泉寺の総門をくぐって、天園ハイキングコースの山道に入る。
寺の密度が高い鎌倉では、寺巡りには駅前にあったレンタサイクル利用が一番効率良さそうだが、鎌倉にはこういう山道が近道にもなるので、それを使う場合は徒歩しかない。
目指す明王院への山道は地図には載っているものの分岐点の指導標に示されず、またGoogleマップのナビもルートとして認識してくれない。
でも踏み跡は確かなので、山をやっている者ならスマホの地図を見ながら難なく明王院脇に降りられる。
13時を数分過ぎて着いた明王院では、茅葺の本堂(写真)で護摩法要が始まっていて(法螺貝の音が響く)、堂内は参拝者で満席。
それでも最後尾の縁側に立って、前席の人に配られた読経の冊子を後ろから覗きながら、観音経の唱和に加わる。
法要が終わると、一人づつ護摩木を渡されて、護摩の残り火にくべて、奥に進んで開帳された五大明王を拝観する(ただ暗い堂内で黒ずくめの像は、不動明王以外見分けがつかない)。
明王院を後にし、ここまで来たならと、鎌倉最東端の寺である光触寺(時宗)をやはり半世紀ぶりに訪れる。
昔はなかった一遍上人の銅像があった(全国的には珍しい時宗寺院が鎌倉にはいくつもある)。
寺に入る道の入り口にバス停があり、鎌倉駅行きのバスは10分おきにあるので乗っていってもいいのだが、この地には多分もう訪れることはないと思うので(あっても半世紀後?)、道路脇の石仏群を見て、訪れていなかった松久寺(曹洞宗)に立ち寄る。
ここまで来たなら、もう少し進んで多数の仏像を拝観できる杉本寺(すぎもとでら)にも立ち寄る(浄妙寺、報国寺はカット)。
ここは30年ぶりだが、本堂に上がる石段の上半分は苔むした石段となって観賞用となっていて(写真)、代わりに脇に新たな石段ができていた。
高台にある本堂では、本尊の(行基作などの古い)3観音は本堂奥に鎮座していて遠くから眺める。
目の前の前立ち(本尊のレプリカ)の観音がなんと運慶作という。
杉本寺は、鎌倉時代の寺ではなく、平安初期創建の鎌倉で一番古い寺。
ここで本尊3観音の御影(3枚で300円)を買う。
ここからバスで鎌倉駅に戻った。
私は、御朱印集めの趣味はないが、ご本尊の御影を集めている。
今回、覚園寺と杉本寺で計4枚の御影を得たが、明王院の五大明王の御影は残念ながら9月28日しか配布されない。
今年のその日はウィークデーなので、それをゲットできるのは、退職後だろう。
ということは、いずれまた東鎌倉を訪れることになりそうだ。