腸脛靱帯炎で大好きな山歩きができなくなりそうだったが、ZAMSTのサポーターを装着して以来、山の下りでも靭帯の痛みが出なくなった。
これは嬉しい。
ただ、山で痛みが発生すると歩行困難になるため、実際どの程度の負荷まで耐えられるのか確認する必要がある。
そこで、”リハビリ登山”として、慎重にじわじわ山の高さを上げている。
山の入門コースである高尾山(599m)から初めて、奥多摩入門の高水三山(793m)、そして奥武蔵の丸山(960m )といずれもクリアしてきた。
今回はいよいよ千メートル(4桁)の壁に挑戦する。
その対象に選ばれたのは、茅の丸(かやのまる:1019m)!
ちっとも有名でないので、場所をお教えすると、東京と神奈川と山梨の三県境の山である三国山(三国峠ともいうが形状は山:961m)の東隣りにある生藤山(しょうとうざん:990m)は登山ガイドにも乗っているので東京で山をやっている人はご存知のはず。
その生藤山の東隣りの山がこの茅の丸。
有名な生藤山よりも標高が高いのだ。
このマイナーな山を選んだ理由は千メートルを越えているからだけではない。
茅の丸自体は、中学校の時私が主宰していた”山行会”で生藤山とともに登ったのだから、標高だけなら未踏の山よりむしろ選択順位は低くなる。
私は中学以来奥多摩の山々に足跡を残してきたのだが、三国山から西に延びる笹尾根の浅間(センゲン)峠の間が未踏域として残っているのだ(この間には千メートル峰はない)。
つまり茅の丸に登れば、待望の千メートル超えと残り少ない奥多摩での未踏ルートを消すことができるとうわけだ。
選んだルートは、生藤山の正面ルートといえる南(神奈川県側)から登り、茅の丸を往復して三国山から西の笹尾根に入り、浅間峠で北(東京都)側の南秋川の上川乗に降りる、というもの。
この逆ルートでもいいのだが、そうなるとバスの便の都合で出発が1時間早まる。
この歳になっても早起きが苦手なので、できるだけ遅出にしたい。
この地域に行くのは実に中学以来。
こんなに間があいた一番の理由は、地方のバス会社が運行する少ないバスの便のチェックが面倒だったこと(昔は、バス会社に電話して尋ねたものだった)。
ところが今では、ネットで簡単に運行時刻がわかるので、バスの便に合せたルート選定はもちろん、自宅最寄り駅からの往復の電車の乗り継ぎまでわかる。
というわけで、計画通り、往きは新宿から京王線で高尾まで行き、そこからJR中央線に乗換え、上野原(山梨県)で降りる(JR通しで行くより、乗換えに要する数分の時間ロスで300円ほど浮くことがネットアプリでわかる)。
遅出だったためか、駅に降り立った登山客は少ない。
バス停前には上野原から行ける山歩きコースごとの詳しい説明の手書き原稿の紙が配布されていて、「生藤山」のをいただく。
登山口に行くバスに乗ると、休日なのに登山客は私一人(他の地元客も途中の街中で下車)。
「石楯尾神社前」(神奈川県)で降りて、目の前の野菜の無人販売 で「オオサヤエンドウ」(でかいエンドウ)がたっぷり入った袋を家の土産に1つ(100円)を買う。
愛らしい夫婦杉のある神社に詣で、行く手の高い稜線目ざして出発。
はじめは林道沿いだが、やがて登山道になり、つづら折りになって急斜面を登る。
今回は、千メートル挑戦以外にも2つの事に新しくトライする。
1つめは、”ハイキングハイドレーション”なるもの(チュープのついた柔らかいゴム製の水筒)をザックにくくりつけ、歩きながらいつでも水を吸引してみる。
山にある程度慣れてくると、水を飲まなくてすむようになりがちで、私もその一人なのだが、客観的には、高血圧持ちが山で汗をかいて水分を摂らないと、血液と血管に悪影響がでるので、むしろ積極的に水分を補給すべきなのだ。
ただ、山頂以外では休憩を取らないタチなので、水筒だと水分を補給するタイミングをもてない。
かといって山頂の休憩で、水を一気にがぶ飲みするのも良くない。
なので行動中に随時水分補給ができるこれを買ってみたのだ。
もう1つは、一人歩きの暇つぶしに、iPadでラジオ番組をヘッドホンで聴きながら歩いていたのだが、ヘッドホンだと、自然の音が聴けないし、行き交う他人との会話も面倒になる。
そこで買ったばかりのBoseの肩に乗っけて耳元で鳴るスピーカを装着してみた。
両方とも山中でのみ使用するものだが、いずれも快適で、口にチューブをくわえて水をちびちび飲みならが、肩から鳴るラジオ番組を聴く。
ベンチのある三国山では昼食をとっているグループがあちこちにいるが、素通りして、生藤山も巻き道で素通りし、目的地の茅の丸に達する。
誰もいない1019mの山頂は狭く、樹間から南側の丹沢方面が見える(写真)。
ベンチが2つあり、そこに坐ってコンビニで買った菓子パン2個を食べる。
ついでに非常食としてザックに入れっ放しだった数年前に賞味期限切れした変色したチョコレートも齧る(私の腹はこの程度を憂慮する必要はない)。
やはり休憩時には水を勢い良く飲みたいので持参した別の水筒で水を飲む。
帰りのバスの時刻もわかっているので、それに間に合うよう出発。
露岩の険しい生藤山を越え、誰もいなくなった三国山も越え、ここからは未踏の領域に入る。
尾根の縦走になるので、登り下りの繰り返しとなるものの、標高は徐々に下っていく。
丹沢檜洞丸を正面に望む熊倉山(966m)を超え、左の山梨側は針葉樹の植林で、右の東京側は広葉樹の自然林。
ここに来て靴内の足が悲鳴を上げた。
実は、これまでの新しい靴ではなく、以前の足首が深い靴を履いてきたのだが、その靴は1サイズ大きいため、厚手のソックスを履いてきた。
ところがインソールを厚くしていことを失念していたため、結果的に足が圧迫されてしまった。
前日に確認していれば、薄手のソックスを履いてきたものを…
登りではなんとかごまかせたものの、下りとなるとそうはいかない。
インソールを外してみると、逆にブカブカ(きつめより尚悪い)。
しかたなしに、インソールはそのままで厚手のソックスを脱ぎ、素足で靴を履くことにする。
この状態で山歩き、しかも激しい運動の下りとなると、”靴ずれ”の発生が恐ろしい。
なので、靴ひもをギュッ締めて、靴の中で足が動かないようにする。
これでなんとか下りをスタスタ歩けて、坊主山(951m)を超え、降り立った浅間峠でもう一度靴ひもを締め直し、山を下って無事に上川乗のバス停に着いた。
靴の中の素足はもちろん、左脚の腸脛靱帯も無言のまま。
千メートルの壁を超え、行く山ももはや初心者向きではなく一般向きレベルになっている。
次は更にグレードを上げよう。
ただし早起きをせずにすむ山に。