松静自然 -太極拳導引が教えてくれるもの-

松静自然とは落ち着いた精神情緒とリラックスした身体の状態をいい、太極拳導引の基本要求でもあります。これがまた奥深く…

武術の背景に改めて感じ入りました

2005-07-07 | 行雲流水-日日是太極拳導引-
いくつかある中国武術や
太極拳関連サイトのB.B.S.を訪れてみると、
実にさまざまな流派が中国や台湾から
伝わってきていることや、
本来の武術として研鑽に励んでいる方達から
趣味として楽しむ愛好者まで、
それぞれの立場からいろいろな思いや考えを
発信していることがわかります。
自分の感性に合ったサイトを
見つけることができれば、また別の楽しみが
広がってきます。

そんな中で最近改めて考えさせられたことがありました。
たまたま陳式十三刀の講習会の告知があって、
その講習会に申し込まれる方達と
主催される方とのやりとりを拝見していたわけです。
すると陳式十三刀というのは
対日本刀としての技術が盛り込まれているという
一文に目が止まりまして、えっ?と思ったのです。
日本刀対策って…戦争中のことなの?それっていつの?

そうなんです。太極拳も今でこそ健康によいという
謳い文句で多くの愛好者がいますけれど、
本をただせば武術です。
生命を脅かされる情況下でいかにして生き延びるか
という目的のために編み出されてきたもので、
先代による命がけの切実な思いによって
創造された技術なのです。
技を磨くことは殺傷能力を磨くことでもあったわけです。

先生が動作の意味を教えてくださりながら、
ときどき「この型は女性にとっても護身になります」と
話されることもあるのです。
しかし聞いている方はそうなんだ~
くらいの反応しかできません。
身の危険を感じる情況をリアルには
想像できないからです
(実際にはそこまで要求されても困ってしまいますし、
先生も望んでいるとは思えません。
これは批判などではありませんのであしからず)。

先の陳式十三刀にしても、
そこから当時の日本と中国との関係が
否応なく見えてくるのです。
中国の伝統文化の中では
太極拳の歴史は意外に新しいのです。
いま套路練習している孫式にしても、
ひとつひとつの型を掘り下げていけば、
そこには打ち方ひとつで
相手の命を奪ってしまうこともできる殺傷力が
備わっているのでしょう。
現代では必要がないから伝えないだけなのかも。

ちなみに「伝わる」ことと「伝える」こととは
全く違うものだと思います。
その意味では武術だけに限らず、
さまざまな世界で伝承人(者)といわれる立場の人達は
常に選択を迫られていることになるのでしょう。
かたやこうしてノー天気なことを書いていられる自分ですが、
それでもそのような世界の存在をちょっとでも知ることで、
改めて感じ入ることも少なくないのです。